仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 


 

●訣別





□愛媛県警本部監察室

  仙波は2名の若い監察官から聞き取り調査を受けている。

仙波「なんで君らみたいな警部補が取り調べるんぞ」

監察官「いや、これはあくまでも事情聴取です」

仙波(声が大きくなる)「ほんなんはどうでもええわい。監察室には警部も警視も警視正もおるんやから、彼らに調べさせえや」

監察官(恐々と)「他の者は、とても仙波さんをよう調べん、と言うんですよ。それで上司から、お前行ってこい、言われたんです。上司の命令ですので事情を聴かせていただきますんで、よろしくお願い申し上げます」

仙波(ため息をつく)「それで、昨日も聞いたけど、お前らは2人やろう。こっらは1人やけん、何を僕がしゃべったかいうこの調書を閲覧させてくれ言うたわけやが、やっぱり、見せてもらえんのやな」

監察官「そうです」

仙波「弁護士の同席も認められんと」

監察官「そうです」

仙波(ため息をつく)「しゃあないなあ。ほいで、昨日どこまで話したかのう。鉄道警察隊に配属されたところまでやったかいなあ」

  話しながら仙波は、
  上着のポケットに入れたテープレコーダーのスイッチを入れる。
 
仙波「しかし君ら自身、実際には捜査報償費を支払ったことはなかろが」

監察官「はあ」

仙波「やったら愛媛県警が腐り切っとるということは全部わかっとろうが」

監察官「はあ」

仙波(ため息をつく)「なんなんぞ、いったい……」

  そこに菅が顔を出す。

菅「ちょっとええかな」

監察官(ホッとした表情で)「はっ、わたしらは外します」

  監察官たちは席を外す。

菅「仙ちゃん、わしはお前の上司として、いや、同期のよしみでお前の異動には断固反対したんぞ。ほやけど止めれんかった。
 お前がやったことは、警察全体の顔に泥を塗ることやけんのう。しばらく通信指令室で静かにしといてもらえんか」

仙波「お前も、みんなが裏金を懐に入れとることは知っとろが。それでええと思とるんか」

菅「仙ちゃん、警察は、ありがたい組織やと思わんか?
 白石は署長をやるたびに1000万ずつ餞別もろて家を2軒建てとる。裏金だけじゃのうて、業者からの餞別もあるけんな。わしなんかまだ、合わせて600万ぐらいや」

仙波「ぼくらの代で、そういうことはおしまいにしようや。部下のことを考えてみい。みんなあ文書偽造なんかしとうないんぞ。
 さっきの監察官たちも、心の中では僕に拍手しとる。あいつらの上司は逃げてしもて、僕と面と向かって聞き取りもできんやないか。
 お前も裏金をつくっとることを認めいや。辞令も撤回せい。このままやと裁判になるぞ」

菅「いや、そういうわけにはいかん」

仙波「どうしてもか。裁判になったら、僕を異動させたお前は、被告になるんぞ」

菅「わかっとる。(ため息をついて)今日からわしとお前は敵味方や!」

  菅は監察室から去る。

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。