仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 


 

●組織の報復





□警察庁長官官房長室

  仙波の記者会見のテレビ報道を見ながら、
  小林官房長が受話器を握って怒鳴っている。

小林「こんなことは警察始まって以来のことだぞ。なぜ止められなかったんだ。
 ……言い訳はいい、言い訳は! これ以上問題が広がらないように徹底的に対策しろ。さっき私も長官直々にお叱りをいただいたところだ、国会でも質問されるらしい。こんなことが全国に広がったら、警察組織は崩壊する。
 ……言い訳はいいと言ってるんだ。私もそちらに行く。いいか、この件の対応を誤ると、君が帰ってきても警察庁に君の居場所はないぞ」



□愛媛県警本部長室

  鈴木が警察庁の小林と話している。受話器から小林の怒声が漏れる。
  幹部たちの前で、鈴木本部長が冷や汗を拭いながら電話を置く。

白石「本部長、まことに、誠に申し訳ございません」

鈴木(深いため息をつく)「できてしまったことはしょうがない。どう対処するかが問題だ。しかし仙波は、ほんとうに一度も領収書を書いてないのか?」

白石「ほうなんです。わたしの下におった時も書かせようとしましたが、拒否するどころか、殴りかかってきたくらいで」

菅「あいつは酒も飲まんし、業者の付け届けも絶対受け取らんのです」

鈴木「うーん、そんな警察官がいたとはな……。それで、どうする。まず仙波の処分だが」

白石「やはりクビですか」

鈴木「いや、とりあえず手元に置いて、プレッシャーを与えつつ、監視するのがいいだろう。鉄道警察隊では目立ちすぎる。報復人事ととられてもまずいから、同じ課内の異動がいい。どこか適当な部署はないか」

白石「それなら通信指令室がええと思います。外部の目に触れませんし」

鈴木「よし、適当なポジションをつくってすぐに異動させろ。それだけでは生ぬるいな。菅課長、何かいい懲罰はないか」

菅「拳銃を取り上げましょう」

鈴木「うん、拳銃すら持たせられないような危ない警察官だという噂を広めろ。ほかに仙波の弱みを徹底的に調べて、あいつの信用を落とすんだ。
 県知事は私がおさえる。もう失敗は許されないぞ」

幹部「ハッ」



□愛媛県警本部地域課

  仙波が出勤してくる。

菅「仙ちゃん、昨日は大変やったな」

仙波「課長にも迷惑かけるのう」

菅「それで早速やが、異動を内示する」

  仙波、驚く。菅、辞令書を取り出す。

菅「通信指令室企画係主任を命ずる。今日の午後から行ってくれ」

仙波「そんなに急に言われても、行けるわけなかろうが」

菅「それから、仙ちゃんの拳銃は預からせてもろたからな」

仙波「ちょい待てえや、それは困るが。拳銃なしじゃ勤務できんやろが」

菅「通信指令室に拳銃はいらんやろ。それに仙ちゃん自身が、辞めるときは死ぬときだ、言うとったやないか。自殺防止のためや」

仙波「あれは、そんな意味じゃないことはわかっとるやろ。菅、拳銃だけは返してくれ」

菅「いかん。これは本部の決定事項やけん。明日はこの記者会見の件について、監察室の聞き取り調査を受けえよ」

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。