仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●卑劣な工作





□05年1月19日午後10時 愛媛県警本部地域課

  仙波と菅と白石が向かい合って座り、にらみ合っている。

白石「明日どうしてもやるんか」

仙波「まだ決めとらんが」

白石「お前のやっとることは、わしにはまったくわからん。そんなことをやって何の意味があるんぞ。
 素直に領収書を書いとりゃあ、お前もわしらと同じくらい出世しとろうが。それをせんけんいうて、組織に八つ当たりするんはよもだぞ」

仙波「ほったらなんぞ、お前は犯罪に手を染めて出世して、裏金を年に1000万円も懐に入れて、市民の血税を横領して家を二軒も建てとって、それでお前はおもろいんか。うれしいんか。自分が警察官であることを子供に誇れるんか。それがお前の正義か!」

白石「まだ正義があると信じとるんか?」

菅(割って入る)「まあまあ。あのなあ仙ちゃん、警察が裏金をバラされてよ、はいそうですか、と引き下がる組織やと思うか? 他の県では、何人も死人も出とる。それでも警察は絶対に裏金を認めとらん。
 お前のことを拉致しようという話も出たんぞ。だけどわしが身体を張って止めたんぞ。なあ仙波、だから告発だけはやめてくれや。頼むで」

白石「警部補に昇任させるという話も出とる。定年まで後4年、楽なポストで過ごさんか。
 頼むよ仙ちゃん、お前に裏金のことを告発をされたら、県警は1年間は立ち直れんぞ」

仙波(怒って)「このまま裏金を放置したら、県警は永久に立ち直れんわい。マイナスからでも再出発すべきやろが!」

  仙波立ち上がり廊下に出る。
  白石は追いすがって、すごみの利いた声を仙波の肩越しにかける。

白石「仙波、よう考えたほうがええぞ。よう考ええよ」

  仙波はその声を振り切ってエレベータに乗り込む。



□県警本部前

  仙波が車に乗って本部を出ると、
  2台の車が発進し、尾行してくる。

仙波「来たな……」

無線「相手は気づいとる。信号無視したら、すぐにパクるで」

  仙波は交通違反をせずに、信号が黄色になった瞬間に車を出す。
  後ろの車は発進する大型トラックに遮られて仙波の後を追えない。

無線「あかんわ。こっちは赤信号にかかってしもた」

無線「マルタイは勝山町交差点方向に進行中。車が間に入って、見失いそうや。先回り頼む」

無線「了解」

  仙波は一方通行の道をゆっくり進んで、渋滞の中に割り込む。
  何度か追い抜きを繰り返して代行運転車の間に割り込み、
  もう1台の尾行車が割り込めないようにしながら捲いてしまう。
  仙波は車をコインパーキングに入れて、ビジネスホテルに入る。



□ビジネスホテル フロント

  仙波が急いで入ってくる。

仙波「部屋、空いてますか?」



□05年1月20日朝、仙波家前

  仙波の留守宅を警察官たちが取り囲んでいる。
  菅と白石が玄関先で困っている。菅は電話している。

菅「仙波は家に帰っとらんようです。市内の捜索を続けてください」



□松山市内

  たくさんのパトカーが街中で仙波の車を捜索している。

警察無線「手配車は白のスズキワゴンR。ナンバーは愛媛583 はの17-84。繰り返す……」

b.pnga.png

この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。