仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●墓参





□05年1月19日午後 愛媛県警察総務室

  総務室員が入室し、白石に報告する。

総務室員(「室長、今、オンブズの会から県警記者クラブに、明日の1時半から弁護士会館で記者会見を行ういう通告がありました」

白石「記者会見の内容は?」

総務室員(「発表されとりません」

白石「よし、河野先生の話と合うとる。まずまちがいなかろう。組織不適格者リストの全員に確認して、誰か告発会見やりそうなのがおらんか調べろ。大亀はどう言うとる」

総務室員(受話器を片手に振り向く)「人をやって確認させましたが、記者会見するのは自分ではない言うとります」

白石「リストの全員に当たれ。それでも該当者がいなければ、仙波に間違いがない。

菅「仙波は今、わしの部下なんやが。エライことをやってくれるのう、まったく」



□記者クラブ

  正岡の卓上の電話が鳴る。

正岡「はい、愛媛テレビ。ああ、総務室の吉田さんですか。えっ、記者会見? ああ、あしたの12時弁護士会館でしょ。
 誰が会見するか? 僕は聞いてないけど。そんなの知るわけないじゃないですか。どういう内容の会見なんですか? わからない? じゃあなんで、会見する人を探してるんですか?
 ……もしもし、もしもし」

  電話切れる

正岡「変な電話だなあ。総務室は何をやってるんだ?」




□仙波の妻の墓の前

  告発前日の夕方。覚悟を決めた仙波は墓参に来る。
  仙波は母親と携帯電話で話している。

仙波「……わかってくれてありがとう、母さん。とにかくどうなるかわからんのよ。あなたの息子はもう死んだと思ってください。今までありがとう。お体を大切に。
 ……そんな、カゼひかんようにって……。はい、わかりました。じゃあ」

  仙波は妻の墓に花と線香を手向ける。

仙波「八重子、きのう王仁に面会してきたよ。お父さんはあることをする。正義を貫くためだ。それをやると、もう面会に来られんようになるかもしれん。でっちあげ逮捕されるか、事故を装って殺されるかも。許してもらえんやろうかと聞いたらね、王仁は、それで正義が貫けるのなら、僕のことは心配しなくてもええよ、やって。
 王仁にもお前にも、迷惑をかけ通しやったなあ。許してほしい。でも僕のような警察官がひとりくらいはおらんとな」

  仙波は暗くなるまで八重子の墓と話し続ける。
  携帯に電話がかかってくる。

仙波「はい、もしもし」

菅「仙ちゃんか? 菅やが、いま本部長室におる。すぐ戻ってこい。本部長命令や。白石もおる。晩飯食べずに待っとるから」

仙波「わかった。20分待てや」

  仙波は電話を切り、立ち去ろうとする。
  そのとき仙波の耳に、八重子の声が聞こえてくる。

八重子「あなたらしいわ、がんばってね」

  仙波は墓を振り返ってニッコリ笑う。

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。