仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●病魔







□警察署の廊下

  出勤した仙波は、白石署長と廊下ですれ違う。

白石「仙波、大変やったのう。ほいで新しい仕事は決まったんか?」

仙波「いや、僕は辞めんよ。警察官を続けるつもりなんよ」

白石(意外な顔で)「ほうなんか。まあ気を落とすなよな」



□仙波家

  電話が鳴って、八重子がとる。

八重子「ハイ、仙波です」

電話「旦那はおるか」

八重子「いえ、出かけてますけど」

電話「なんぞう、じゃあ、あんたでええわい。
わしはな、警察官や。日ごろあんたの旦那は、警察の裏金はいかんと偉そうに言うとるくせに、息子が人を殺しても警察を辞めんのか。そんな奴が、警察を偉そうに非難するなと、あんたの旦那にしっかり言うとけ。わかったか!」

  電話が一方的に切れた後、玄関の呼び鈴がなるので八重子が出る。

寿司屋「仙波さんですよね。すし清ですが、上寿司20人前、お持ちしました」

花屋(「ご注文の花束と、蘭の鉢植えをお届けに3りました」

八重子「あのう、私は注文していませんけど」

寿司屋「いえ、確かに仙波さんから承っていますよ。6万円になります」

  八重子が居間に戻ると、「人殺しー」という声がして、
  石が投げ込まれて窓ガラスが割れる。
  石は子犬に当たって子犬が死んでしまう。
  それを見た妻は倒れてしまう。



□古茂田弁護士事務所

  仙波夫妻は、女性弁護士の古茂田を訪ねる。

古茂田「息子さんの控訴審の弁護をお引き受けした古茂田です」

仙波「ありがとうございます。よろしくお願いします」

古茂田「かなり厳しい裁判になることをご承知ください。
捜査段階で、不利な調書や証拠がたくさん作られてます。その一方で、息子さんがいつも車の中に入れていたサバイバルナイフは記録すらされてません」

八重子「もし息子が計画的に署長を殺すつもりやったら、消防署の台所の包丁なんか使わずに、あのナイフを使うはずなんです」

仙波「ですから、この事件は、過失致死なんです」

古茂田「ですが裁判所は、警察の提出する証拠を信用します。計画的犯行のセンは崩れてません。私も最善は尽くしますが……」

仙波「せめて計画的な殺人という濡れ衣だけは、晴らしてやりたいなあ」

八重子「私、やっぱりあの子の面会には行かんつもりなんよ」

仙波「どしてぞ? 行ってやったら王仁が喜ぶのに」

八重子「私、今のあの子の顔を見るのがつらいんよ。だからあの子が罪を償って戻ってきたときに、あの子の晴れ晴れとした顔を見てやりたいの。私はあの子を信じとるんよ。あの子を待っておりたいんよ」



□高松高等裁判所法廷

裁判長「判決を言い渡します。主文、被告を懲役12年に処す」



□仙波家

  掃除をしている八重子。突然激痛に襲われ倒れこむ。

八重子「きゅ、救急車……」

八重子はやっとの思いで電話に手をかけ、ダイヤルを押し始めるが、
途中でその手を止める。

八重子「ああ、やっぱり消防署には電話できんわ……」

  八重子は玄関に倒れて苦しみ続ける。



□病院の入院病棟廊下

  仙波が慌てて、着替えを持って入院病棟にやってくる。
  固まって話している看護婦たちを見つけて話しかける。

仙波「仙波八重子が入院しているのはこちらですか。夜勤明けに、着替えを持ってきてほしいいう電話があったんですが」

  看護婦の中から婦長が歩み出る。

婦長「仙波さんの旦那様ですか」

仙波「そうです」

婦長「ちょっとこっちに。実は、大変申し上げにくいことなのですが、奥様は末期のがんです。
お気の毒ですが、もうあまり長くは……」

  仙波はショックを受け、そのままふらふらと病院の玄関から外に出る。
  青空がにわかにかき曇り、驟雨が降り始める。雨の中に立ち尽くす仙波。

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。