仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 


 

●親子とは





□仙波家居間

  テレビニュースに、松山市消防局長の記者会見が映っている。

テレビ報道「本人は常日頃の生活態度に問題があり、署長からたびたび生活指導を受けたことを逆恨みしての言語道断の犯行である。
 ……松山市消防局長の会見でした」

  仙波はテレビを消す。

仙波「あの消防署長は、県警からの天下りなんよ。僕が日ごろから、警察の裏金のことを言うとるんで、恨みに思ってあんな厳しいことを言うんやなあ」

八重子「私らはどうしたらええんやろう」

仙波(考えて、重々しく口を開く)「ぼくらは、王仁の親としての責任をとらんといかんと思うんよ」

八重子(仙波の目を見て)「そうやね」

仙波「理由が何であれ、王仁が人様を手にかけてしまった以上、僕らも死ぬしかない。準備をしてから、息子たちに話そうや」

八重子「はい」

  仙波は遺書をしたためる。
  八重子は貯金通帳や判子、生命保険証書を整理する。
  次男と三男はうなだれて両親の前に座る。

仙波「こういうことになった以上、お前達はここにはおれん。ここにうちの全財産がある。この家を売って金をつくり、お前たち2人は県外に行って2人で生きて行きなさい」

次男(泣きながら)「父さんたちは死ぬんやね、

  仙波と八重子は、黙ってうつむく。


次男「父さん、逝くんやったら四人で逝こや。こんな事があった以上四人で逝ったらええ」

八重子「何言うとん。あなたたちには関係ないでしょ。あなたたちには生きていってほしいんよ」

仙波「お前らは、どんなことがあっても生きていけ」

次男「父さんも母さんもおらんようになって、僕たちだけでどうせいいうんよ。世間に非難されながら生きていくのは僕たちだって辛いよ。死んだ方がずっと楽なんよ」

仙波「じゃあ、どうしたらお前たちは生きられるんぞ?」

次男(しばらく考えて)「もし父さんが一番つらい厳しい道を歩むんなら、僕らも頑張って生きていけると思うよ」

仙波「何なんぞ、その父さんにとって一番つらい道というのは」

次男「それは、父さんが警察を辞めずに警察官を続けるいうことよ。父さんが一番つらい思いに耐えとったら、僕らも生きていける」

仙波(一瞬言葉に詰まるが)……「そうか、それであれば、仕方がないか……」

八重子「あなた、それだけはやめて。
 警察官の身内が殺人事件を犯したら、警察官は辞めるのが普通やのに。ましてやあなたは裏金づくりに協力しとらんから、今でもひどい目におうとるのに。この先どんな風当たりがあるか。それ考えたら、私にはとても耐えられんわ」

仙波「ほうよ。僕にとって警察の職場は針のむしろになるやろう。八重子にも今以上に迷惑をかけることになる。
 やけどこの2人のためやったら、僕は何でもするわい。僕は一度死んだと思って警察官を続けるから、助けてくれんやろか」

八重子「……わかりました。あなたがそうおっしゃるのなら、私は従います」

  泣きじゃくる母子。

b.pnga.png

この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。