仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●組織の横暴





□松山市中央消防署のトレーニングルーム

  仙波王仁がトレーニングをしていると、同僚たちがやってくる。

署員「おい、仙波あ。お前昨日は、どこ行っとったんぞ。ずいぶん楽しかったらしいやないか」

王仁「昨日は休みをもらいましたけど、それが何か」

署員「わしらが働いとった間、サーキットに行って車転がしとったらしいのう」

王仁「そうやけど、よう知っとりますね」

署員「おい、わしらは、働いとったんやぞ。新人のくせに休みなんかとってええ思とんのか」

王仁「きちっと署長に休暇届を出しとりますけど」

署長(背後から現れる)「わしは、サーキットに行くなんてわかっとったら、新人に休みなんかやらなんだぞ」

王仁「そんなあ。休みを取ったらいかんのですか」

署長「(王仁の胸ぐらをつかむ)わしの部下やったら、勝手なことすな。お前、おやじが警察官いうんで、態度がでかすぎやないか。ええっ、わしにはヤクザの友達が何人もおるんぞ」

王仁「僕が悪かったら、いくらでも謝りますが、僕は何か悪かったですか」

署長「その態度が気に入らん言うとるんやろが」

  署長は王仁を殴り倒す。
  署長が目で合図すると、取り囲んで話を聞いていた署員たちが
  王仁に殴る蹴るのリンチを加える。



□県警本部記者クラブ室

  菅が入り口から缶コーヒーを持ってきて、
  全国紙記者の東に声をかける。

菅「東さん、ちょっとええかな。ちょっとちょっと」

  菅は東にコーヒーをわたす。

菅「いやあ、お願いがあるんやけどね。小林本部長のことなんですけど」

東「ふふっ、幹部連中、みんなぁ随分いじめられとるらしいのう」

菅「うん、そうなんよ。それで困っとるんは、運営費のことなんですけどね」

東「裏金だろ」

菅「これまで毎月各部から20万円ずつ出させて、月100万円本部長が使えるようにしとったんですけどね、それじゃ足りんいうて言い出しましてね。
 それで各部から本部長への上納金を月30万円にせい、言い出しとるんですわ」

東「そりゃひどいなあ」

菅「それどころか、月末になると金が足りんようになるんで、私がポケットマネーを出してなんとかやりくりしとるんですよ。でももう、貯金がのうなりそうで。
 東さんの口から、上納金の値上げをやめるように本部長に伝えてもらえんやろか。なんとかお願いしますよ」

東「そう拝まれたらしょうがないのう。
 小林はカネ癖といい女癖と言い、ほんとに評判が悪いのう。歴代ワーストやろう。あんたと同期の白石なんか、昇任のために自分の女房を小林に差し出したいう話を聞いとるで。道理で出世が早いはずで。
 これはいっちょ、ガツンと言うてやるか」

  立ち上がる東。



□県警本部長室前室

  東が、本部長室へやって来る。

東「本部長に会いたいんやが、ご在室かな」

秘書官「本部長は、ただいま取り込み中です」

東(怒って)「うそつけ、アホう。(テレビの)相撲の音が聞こえとるやろが。会わせんかい」

  東、本部長室に通ろうとする。
  秘書官は慌てて立ち上がり東をさえぎる。

秘書官「こら、待たんかい。おーい、だれか来てくれ」

  数人の警察官が駆けつけて東を取り押さえようとする。
  東はもがきながら叫ぶ。

東「こら、小林、会わんと県警の裏金のことを明日の新聞に書くぞ。こら、小林っ」

  小林がドアを、こっそり開く。

小林「東さん、どうぞ」

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。