仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●組織防衛の犠牲者.2





□松山警察署取調室

  土井警部が取り調べられている。

取調官「土井、あんたの部下が起こしたことで、県警がどんだけ迷惑を被っとんのかわかっとるんか?」

土井「はい、わたしの監督不行届で、ご迷惑をおかけしました。誠にすみませんでした」

取調官「謝ってすむんやったら、警察はいらんのよ。
 この件については、あんたの責任も大きいんよ」

土井(取調官に向き直って)「えっ、あの、私が何をしたいうんですか。私は何も知らなかったんですよ。わかっとるでしよう」

取調官「ほう、この領収書の控えに見覚えはないんか? これはな、あんたが、忽那と一緒にキャバレーパラダイスのオーナーと癒着しとったいう動かぬ証拠やないんかい!
 誰がどう考えても、あの店で1000円で飲み食いできるわけがないやろ。それを1000円札1枚ですましたいうんは、いったいどういうことや。ええっ!」

土井(表情が凍りつく)「これはですね、あの、あの……」

取調官「これはねえ、立派な贈収賄だよ、贈収賄!」

土井「そ、そんなバカな……。

取調官「事態がこう動いてもうた以上、これは問題になってしもたんよ。検察が出てきたら、大事になるやろ。 うちとしてはこれ以上、逮捕者を出したくないけんね。
 ほじゃけど、あんたが素直に収賄を認めたら、上としても、あんたを悪いようにするつもりはないいうことになったんよ。お子さん、まだ中学生やろ。ように考えて答えるんやなあ。
 あんたはパラダイスのオーナーといろいろ仲良うにしとって、お互い便宜を図り合うような仲やった、そういうことやったんやろ、なっ、なっ」

土井「そんな」

取調官「そうなんやろ!」

土井「……わかりました、オーナーとはそういう仲やったんです。認めます」

  土井が収賄の範囲を認めた調書が作成される。
  土井はそれに署名捺印をする。
  捜査一課長が部屋に入ってくる。

捜査一課長「土井、収賄犯になった以上、お前を警察に置いておくことはできんなあ。残念やけど、依願退職してもらおか。長い間、ご苦労やったな」

  絶望の淵に突き落とされる土井。
  「キャバレーパラダイス事件、巡査部長1名逮捕、警部1名免職」
  という見出しの記事が新聞に載る。
  土井は警察を去る。



□愛媛県警察本部内、廊下

  正岡記者が仙波を呼び止める。

正岡「仙波さん、ちょっと。最近何か面白い話ないですかねー」

仙波「面白い話いうて……、いっつも言うとる警察の裏金の話を、やったらええやないですか」

正岡「(笑って)すみません、あれはデスクが、証拠がないのにそんな当たり前なことは報道できるかと言うんですよ。他に何かないですかね」

仙波「だからマスコミはダメなんですよ。そんなん理屈にも何もなっとらせんやないですか。今回、ぼくの同期の土井がクビになったの知っとるでしょ」

正岡「ええ、実はあの話について詳しく聞きたいんですけれど」

仙波「だから、あれこそ裏金の話なんですって。
 わかりませんか? おなた現場におったんでしょ?
 県警幹部は、キャバレーパラダイスによう出入りしとったんです。そのカネの出所がウラ金だから、臭いモノに蓋をするために、土井は人身御供としてクビになったんですよ。
 いわば裏金隠しの犠牲者ですよ。これがこの件の本質です。その観点から報道すればいいじゃないですか」

正岡「(笑って)すみません、そのセンはデスクが、証拠がなかったらアカン、と言うんですよ。

仙波「だからマスコミはダメなんですよ」

b.pnga.png

この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。