仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●組織防衛の犠牲者.1





□キャバレーパラダイス

  仙波の同期の土井は、松山警察署刑事課警部に昇任し、
  部下から転任祝いにキャバレーに誘われる。

部下忽那(態度がでかい)「警部、こいつ、ここのオーナーなんよ。俺とは長い長い付き合い、兄弟分やけん。
 今日は土井警部の転任祝いで、特別に1人1000円でええんよな、なっ。太っ腹やろ」

オーナー「警察本部の皆さんには、いっつもお世話になっとりますんで。土井警部も、これからぜひごひいきにお願いします」

土井「いやーそれはまずいなあ。きれいに呑もうや、きれいに」

部下忽那「警部、そんなこと言うたらオーナーの顔がつぶれるやないですか。
 もう1000円分の領収書切ってもらってますけん」

土井「ほうか。ほったらまた埋め合わせさせてもらうけん」

部下忽那「この店は、本部長なんかもよく使っとるんで、警察の中では格が高いんですよ。警部になったんやけん、このくらいの店で飲まなんと甲斐性が立たんでしょう。見てください、なかなかええ子がおるでしょ」

ダンサー「いらっさいませー。忽那ちゃんおひさしぶり~。わたしビッキー言います。ヨロシクー」



□後日、キャバレーパラダイス

  松山警察署員たちが店の周囲を固めている。
  正岡記者らテレビカメラもいる。

正岡「愛媛県警が、外人違法滞在ダンサーの摘発に踏み込むところです。まさに今、突入しました」

警察官「動かないで! 警察。動かないで!」

  警察署員たちに続いて正岡記者たちがが踏み込んでみると、
  外国人ダンサーはひとりもいない。署員たちは呆然としている。



□愛媛県警本部長室

  小林本部長たち幹部がテレビ報道を見ている。
  菅の姿もある。

テレビ報道「愛媛県警は周到な内偵の上強制捜索に踏み切りました。しかし、外人ダンサーの姿は1人も店内に見当たりませんでした。警察の捜査は空振りに終わったようです。
 逮捕されたキャバレーパラダイスのオーナーは、警察官から、この日摘発があるとの情報を知らされ、ダンサーたちを隠した、と自供しています。
 県警の度重なる失敗と、業者との癒着に、県民の厳しい疑いの目が向けられています」

小林本部長「いったい何をやっているんだ、おまえたちは!」

幹部たち「大変申し訳ございません。事前の確認を失敗したようです。刑事課長が指揮していたのですが……」

小林本部長「言い訳はいい、言い訳は! 捜査情報を漏らしたのは誰なんだ」

刑事部長「捜査一課の忽那巡査部長です。もうすでに逮捕しています」

小林本部長「フン、そういうところだけは早手回しだな。しかし、あの店は俺も行ってるんだぞ。話がこっちに飛び火したらどうする」

刑事部長「その点はご安心ください。店の事務所にあった名刺ホルダーは持ち出して処分致しました」

小林本部長「この件は、巡査部長1名の懲戒免職だけではすまないぞ。
 あの店にわれわれが出入りしていたといううわさが広がってみろ。運営費の存在が世間にばれるかもしれない。穴を覆い隠すスケープゴートが必要だな。
 (しばらく考えて)忽那巡査部長の上司は誰なんだ」

刑事部長「捜査一課の土井警部です。パラダイスで、忽那と一緒に割引で遊んでいたことがわかっとります」

小林本部長「よし、そいつもクビにしろ。警部の首が飛べば、世間も納得するだろう。いけにえをうまいタイミングで出してやるのが組織を守るコツだ、よく覚えとけ。
 こんなまぬけなことは二度とするなよ」

幹部たち「ハッ」

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。