仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●なぜ警察官になったのか





□松山市内、石手川の河原

  20人ほどの制服の高校生たちが、二手に分かれてにらみ合っている。

工業高校生徒「逃げんと出てきただけ褒めてやろわい。やけんど落とし前はちゃあんとつけてもらうで」

仙波「おう、こっちもそのつもりやが。
 やけんどこれだけ大勢がけんかしたらまずかろう。お互いの代表同士で決着をつけるいうんはどうぞ」

工業高校生徒「かまわんぞ。すぐに決着がつかんように、せいぜいがんばれよ」

仙波「フン、偉そうな口がたたけるのも、今のうちぞ」

  仙波と工業高校の代表の殴り合いが始まってしばらくたったころ、
  パトカーのサイレンが聞こえ、集まっていた高校生たちはバラバラに逃げる。



□仙波の家

  仙波が家まで逃げ帰ってくると、担任の教師が卒業後の進路のことについて母親と話している。
  仙波は暴れん坊であることを、母親の前ではおくびにも出さない。何食わぬ顔で家に入る。

教師「私としては、仙波君には大学進学を勧めたい思うんですがのう」

母親「そうですねえ、でもお金もかかるんでしょうねえ……。あ、お帰り。先生来られとるよ」

仙波「あれっ、先生ようこそ。今日は何ですか」

母親「敏ちゃんの進路のことについて来られたんだけど。どうするかねぇ」

仙波「ぼくは学校の先生になるんがええ思とったけど、学校の先生は大学に行かんとなれんよねえ」

母親「ほやけど警察官やったら実力で署長になれるみたいやけど、どうかねぇ、警察官というのは」

仙波「実力主義はええねえ。警察は弱気を助け強きをくじく正義の仕事やし、きっと僕に合うとるよ。僕、警察官になって、署長になろうかな」

教師「ちょっと待ってくれんかな。
 お母さん、うちは東京大学に毎年20人近く合格する県下一の進学校ですよ。大学に行って、国家試験を通って警察庁に入る。つまり警察官僚になるいうんならわかるけど、うちから愛媛県警に入る生徒はおりゃしませんで」

仙波「じゃあ俺が第一号になるよ。警察官になって、警察官のトップを目指すんならええでしょう、先生」



□松山郊外の牧場

八重子「敏郎さん、警察官僚と警察官はどう違うん?」

仙波「日本の警察官は27万人おるんやけど、この大組織を支配しているのは、実は警察庁にいるたった500人の警察官僚なんよ」

八重子「でも愛媛県警は、愛媛県の行政組織やないん。テレビの刑事ドラマに出てくる東京にある警視庁と同んなじでしょ。
警察庁とは関係ないんと違うん?」

仙波「うーん、正しいけど、それはあくまでも建て前なんよ。僕も入るまで知らんかったんやけど、愛媛県警のトップとナンバー2の本部長と警務部長の2人は、警察庁から派遣されとるんよ。それで、この2人が人事権と予算を握っとる。
 ということは、愛媛県で採用された警察官は、警察庁には逆えないということになるんよ。警視庁も同んなじように、警察庁に支配されとるんや、立場はふつうの県警よりは強いんやけどね」

八重子「ふーん、なんかむつかしいことはようわからんけど、愛媛県警の上に警察庁がおるいうことね。
 それで敏郎さんは県警に入ったんや」

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。