仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 


 

●裏金に背を向ける





□仙波の回想 1973年8月 三島警察署署長室

  巡査部長に昇任した仙波は署長から辞令を受け取る。

署長「愛媛県警察巡査部長に昇任させる、愛媛県警察三島署勤務を命ずる。愛媛県警察本部長

仙波「ありがとうございます」

署長「24歳で巡査部長かあ。管理職の端くれになったいうことや。愛媛県警最短のスピード出世やな。お前は成績もええし、先が楽しみや。頑張れよ。ほいで、これからすぐに会計課に行け」

仙波「ハイ」



□会計課

  仙波が会計課に入っていくと、課員の男性と女性が目配せして席を立ち、
  仙波と入れ違いに部屋を出ていく。なぜだろうと不思議に思う仙波。

会計課長「仙波君、この領収書を3枚書いてくれるかな。鉛筆で薄く書いとる名前を写すだけやから。簡単やろ」

  仙波、茫然と並んだ領収書を見ている。

仙波「本当にあったんや……ニセ領収書。(会計課長に向かって)これはなんですか?」

会計課長「いやいや、みんなやっとるんやから。組織のためや」

仙波「これは文書偽造でしょう。僕はこれまでまともに、まっすぐやってきたんです。僕が人の上に立つ立場になった時に、こんな罪を犯しとったら示しがつかんやろう。何であんたは若い人間の芽を摘もうとするんや!」

会計課長(顔色が変わる)「もうええ」

  仙波が怒鳴ると、会計課長は領収書を引き出しにさっとしまって、部屋から出ていく。
  しばらくすると署長室から、署長の怒鳴り声が聞こえる。

署長「仙波、仙波はおらんか!」



□署長室

  仙波は入室し、直立不動の姿勢をとる。
  署長は顔を真っ赤にして怒っている。 

仙波「仙波参りました」

署長「お前は領収書を書かんのか。どういうつもりぞ」

仙波「私は私文書偽造という犯罪は犯せません」

署長「クソバカが! 組織の運営には金が要るんぞ。領収書書かんかったら、お前は今日から組織の敵ぞ。それでもええんか」

仙波「それでも私は不正には手は貸せません」

署長「お前はこれを不正やと思っとんか。みんなあやっとるんぞ」

仙波「意見を言うてもええですか」

署長(怒り呆れ顔で)「……なんぞう、言うてみい」

仙波「私は、警察がこんな不正を行っとったら、日本の警察は将来だめになると思います。市民の信頼は警察から離れてしまうでしょう。そったら検挙率が落ちてしまう。警察の危機がくると思います」

署長「ほんなこと、お前みたいな若造にわかってたまるか。もうええ、去ね」

  仙波、敬礼して辞去する。

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。