仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●告発の決意.1





□04年11月18日夕方県警本部玄関

  仙波は、数人の弁護士が県警本部を訪ねてきたところと行きあわせる。
  その中に古茂田の姿を見つける。

古茂田「(懐かしそうに)「あっ、仙波さん! ずいぶんお久しぶりです」

仙波 (感無量の面持ちで) 「古茂田先生、お久しぶりです。息子の事件では、いろいろお世話になりました。今日は何の御用ですか」

古茂田「「私たちは、オンブズえひめとして県警の裏金問題を追及してるんです。情報開示請求をしたんですけどね、開示された捜査費関係の資料はこんな感じで……」

  弁護士の今井が、真っ黒にマスキングされた情報開示資料を仙波に見せる。

古茂田「「これじゃ、警察が実際にお金を捜査協力者に払ったかどうか確認できないでしょう。実際には払わずに、裏金にしてるはずなんですけど、確認できないんですよ。捜査上の秘密で開示できない、の1点張りで。それで鈴木本部長のところに、きちんと情報開示せい、いうて申し入れにきたんです」

仙波(感心して)「はあー、弁護士の先生方が警察の裏金にご関心があるとは思ってもみませんでした。ほやけど、お気の毒ですがその申し入れはムダやと思いますよ」

古茂田「「なんでですか」

仙波「だって県警の幹部は全員が裏金づくりに手を染めとって、公金を横領してきた張本人ですから。情報開示なんかするわけないし、誰も何もしゃべりませんよ。裏金のことやったら、私なら、なんでもお話ししますよ」

今井(身を乗りだして)「私は、今の警察はどうかしてしまっとる思うんです。市民からの告訴告発があってもほとんど取り上げん。犯人がわかっとっても、捜査に取りかかろうとする気配すらない。えん罪事件や幹部の不祥事は増えるばっかり。検挙率も下がっとる。このままじゃあアカン」

仙波(熱意に押されて)「皆さんのお気持ちはようわかります。検挙率が下がったのは、警察がやる気と、市民の信頼を失っとる裏返しですけん。裏金づくりに手を染めた警察官は、正義心を失ってしまうんです」

古茂田「「仙波さん、捜査費のうちの何割ぐらいが裏金になってるんですかね。だいたい3割くらいですかねえ? それとも4割?」

仙波(あきれて)「先生、何を言うんですか。捜査費というのはね、ほぼ100%が裏金化されとるんです」

古茂田「(言葉を失う)「ほ……本当ですか」

仙波「皆さんの目の前で、現職の警察官が言うとるんですよ」

今井「ほ、ほんでも愛媛県警の警察官みんながみんな裏金づくりに手を染めとるいうわけじゃないですよね?」

仙波「いいええ、私以外の全員がニセ領収書を書いとりますよ。私は巡査部長になったときにニセ領収書作りを拒否したから、それ以後、昇任できなくなったんです」

  弁護士たちは言葉もない。

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。