仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●テレビ局へのリーク.2





正岡「よ、400億……。
 しかし、なぜそんな大規模な不正が今までばれなかったんでしょうか。にわかには信じられない話ですが」

元課長「そりゃあんた、警察庁が全国の県警の会計をちゃあんと指導して、国の会計検査を通るように、みんなで隠すけんよ。わしら会計にしてみたら、それが一番たいへんな仕事よ。えらい手間やで」

正岡「そうすると、不正を隠すに勤務時間が割かれているということですか」

元課長「ほうよ。それは会計課だけじゃのうて全警察官が、裏金の不正隠しのためにえらい時間をムダにしとうらい。それは、裏金づくりは仕事の一部やけん、当然のことよな。
 たとえばやなあ、警察には、捜査に協力してくれた一般市民に謝礼を払う捜査協力費の予算があるんよ。
 協力者に報酬を払ったときに、警察官の用意する領収書に、協力してくれた一般市民の名前を書いてもろて、判子を押してもらう。この領収書を警察で勝手に偽造すれば、捜査協力費はいくらでも裏金にできるということなんやね。これが警察の裏金のだいたい半分を占めとるんよ」

正岡「そんなの部下に書かせずに、会計課長が自分で書けばいいじゃないですか」

元課長「アホ言うなや。同じ筆跡の領収書があったら、国の会計検査の時にばれてしまうやろ。だから毎月3枚しか領収書は書かせんことになっとるんよ」

正岡「100人の署員がいると、年間300枚しか偽造できないわけですね」

元課長「そういう場合はな、さらにニセ領収書が必要になったら、他の署と領収書を交換して書いてもらうこともあるで」

正岡「組織的に偽造をやって、捜査協力費を横領しているということですね」

元課長「まさにその通り。裏金作りは、警察の中の最重要事項なんよ。どんな仕事よりもな。しかも愛媛だけじゃない。全国で同じことが行われとるんよ。警察組織は、金太郎飴じゃけんな」

正岡「じゃあ、県警の警察官は全員この不正に荷担してるんですか? 全国の警察でこんなバカなことをやってるんですか? あなたが言っているのは、警察官全員がドロボウの常習犯だと言うことなんですよ! と、とんでもないことです!」

元課長「そうじゃって言いよろうが。この証拠を見てみい。動かぬ証拠をなあ。世の中が知らんだけよ。全員がやりよらい。こんなん警察じゃあ、当たり前のことよ。
 ……あ、いや、ひとりだけ例外がおるがのう」

正岡(メモから顔を上げて)「ひとりだけ?」

元課長(首を振って)「ああ、あいつのことはかまわんほうがええ。県警でも相手にされとらんけん」

正岡「そうですか、ありがとうございました」

  正岡、慌ただしく立ち上がる。
  覆面の捜査車両、音もなく立ち去る。

b.pnga.png

この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。