仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●テレビ局へのリーク.1 





□松山市内の喫茶店

  愛媛テレビの正岡記者が、喫茶店で、
  大洲署の元会計課長と会っている。

正岡「大亀さん、なぜ警察が裏金をつくっている証拠を、われわれテレビ局に話そうなんて思ったんですか?」

元課長(やさぐれた感じで)「そりゃお前、県警のやり方に腹が立ったけんよ。事故くらいで免職はなかろう。わしがこれまで、どんだけ警察のためにやってきた思とんぞ。ほう考えたら腹が立ってのう。もうヤケクソよ。
 ほら、これが県警の裏金づくりの動かぬ証拠やけん」

  会計課長は、封筒から判子や領収書を取り出して
  テーブルに放り出す。

正岡「なんですか、これは? こんな飲み屋の領収書が裏金づくりの証拠なんですか?」

元課長「お前らマスコミは、ほんとになんも知らんのう。
 警察にはな、捜査に協力してくれた一般市民に謝礼を払う捜査協力費の予算があるんよ。協力者と会食した時の店の領収書を警察で勝手に偽造したら、捜査協力費はいくらでも裏金にできるやろう。これはそのために大洲署が作ったもんや。立派な私文書偽造や」

正岡(勢い込んで)「じゃ、警察に裏金があるという噂は、本当やったんですね?」

元課長(笑って)「ホントもホント、大ホントよ。作りよった張本人が言うんやけんまちがいない。それものう、これだけやないんよ。他に捜査協力者に払う現金も警官全員がニセの領収書を書いて裏金にしとる」

正岡「全員ですか?」

元課長(笑って)「巡査部長以上は、全員犯罪者よ。私文書偽造、公文書偽造のなあ。それから旅費、残業手当、日当、物品費、これらも全部ごまかして裏金にしとる。
それからおいしいんが、事件があって所轄に捜査本部が置かれて本部から来る捜査費やのう。銀行からわしが下ろしてきたら、半分はすぐ県警本部に上納。残りはすべて署の裏金になるけん、現場には1円も回らんのう」

正岡「それじゃあ、捜査ができないじゃないですか?」

元課長「捜査なんか誰がする? 捜査員は自分の車で、自分でガソリン代払ろて捜査するしかないんで。あほらしいけんみんな捜査なんかせずパチンコ屋に入るんよ。捜査本部ができたら、パチンコ屋の駐車場はウチの署員でいっぱいで。
やけん検挙率が下がるんよ。40年前は6割方捕まえよったが、いまはもう2割やけんのう。テレビでやっとる刑事ドラマはウソばっかりよ、はっはっは」

窓際のテーブルに向かい合い、資料を前に話している2人を、
覆面の捜査車両の助手席に座った人物の望遠カメラが捉えている。
2人の顔をアップにして、さかんにシャッターが切られる。

正岡(ショックを受けながら)「それでその裏金は何に使っとるんですか?」

元課長「そりゃあお前、まず幹部の飲み食いやろう。現場が寒い夜に張り込みをしとるのに、お偉いさんは料亭や旅館でぬくぬくとマージャン大会よ。ほいで残った裏金は、警察署長さまが3月末の転勤のときに1000万、金庫から鞄に詰めて持っていくんよ。あとはからっぽよ。みんなあ、家を2軒も3軒も建てとらい」

正岡(怒りを抑えつつ)「いったいどのくらいの裏金が作られとるんですか?」

元課長「そうよのう、愛媛県警でだいたい年間4億がとこかのう。全国で400億円が、警察官の懐に入っとるんよ。まあ詐欺・横領やのう。もちろん税金なんか払わんよ。この状況を50年も放置しとるんやけん、日本の納税者はまぬけよのう、はっはっは」

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。