仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

仙波敏郎 愛媛県警巡査部長に聞く「裏金告発の行方」

「辞めるときは死ぬときだ」

愛媛県警巡査部長
仙波敏郎 氏  

運営者 以下は、『日本警察と裏金 底なしの腐敗』<北海道新聞取材班(編)・執筆は愛媛新聞記者> の第2章「愚かなり愛媛県警」に記載されている、仙波さんの告発記者会見の抜粋です。会見の雰囲気がよく伝えられています。

 オンブズえひめの弁護士らとともに会見場に現れた仙波氏は、入り口付近で深々と一礼。報道陣のカメラのフラッシュをいっせいに浴び、まっ正面を見詰めマイクに向かった。
「愛媛県警、仙波敏郎巡査部長です」
 直立不動の仙波氏は一言一句かみしめるようにゆっくり自己紹介を始めた。
「38年間の警察生活の中で見たこと、聞いたことを、そして自分の体験にもとづく真実を話します」
「捜査費の支払いはすべて架空。協力者に支払われた事実はありません」

 (中略)

 仙波氏の会見はつづいた。時折、感きわまったのか、言葉に詰まる場面もあった。
「ただ単に偽の領収書のことを話したいのではありません。現場で一生懸命やっている若い……若い捜査員だとか、……寒い中、昼夜を問わず……頑張っている、そういう現場の警察官は多い。しかし、今のままでは、社会正義を守ることができません」

 (中略)

「私は30年以上巡査部長だが、それはある意味で自慢なんです。35歳以上の警部補以上の者は、偽造領収書を書かなければ、なれないからです。今日、ここで、こういう話をすることには、ずいぶん悩みました。昨日も、一睡もしていない。引き止め工作もあった。いろんな意見もあった。売名行為だとか、自分のためにしているんだとか。でも、そんなわけでは決してない」

 (中略)

 仙波氏は「もう一度、言います」と言葉をつなぎ、一段と語気を強めた。おそらく、仙波氏は全国の警察官に向けて言いたかったにちがいない。
「もう一度、言います。現場の警察官は、ほんとうにすばらしい警官です。これから志をもって県警に入ってくる者のためにも、膿は全部、出し切って、再出発すべきだと思う。命のあるかぎり、私は自分の……信念を通します」

 (中略)

「自分が38年間も世話になったところを、こういう形で言うのはいろいろつらい……。正直、思っていなかった。しかし、私は警察官が好きです。こんなすばらしい仕事はない。いまでも思っています。2324人、愛媛県警の警察官で、一般職を入れれば、2700人、その大多数が偽造領収書を作っておったとしても、それは家族を守るためだったと、ご理解ください。こういう私の発言から、どうしても現場の警察官に厳しい風が吹く。できますならば、厳しい風は管理職に向けてください。現場は一生懸命やってます。愛媛県警も捨てたもんじゃないと思います」
 発言の終わりにさしかかるころ、仙波氏はポケットから白いハンカチを取り出し、目頭を何度も押さえた。そうやって、涙が頬を伝うのをかろうじて防いでいた。横に座るオンブズえひめの弁護士もこみあげる気持ちを抑え切れず、涙をこぼした。
 会見でも明らかにされたが、仙波氏は会見の前、実名告発を阻止しようと説得にきた県警幹部ら3人にたいし、固い決意をぶつけていた。
「捜査費問題にふたをしたら永久に県警は立ち上がれない。マイナスからでも再出発すべきだ」と。

 (中略)

 記者からの「告発後も県警に残り、闘っていくのか」との質問にたいし、仙波さんは鬼気迫る表情で、こう覚悟を示した。
「辞めるときは死ぬときだ」

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