仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

仙波敏郎 愛媛県警巡査部長に聞く「裏金告発の行方」

御用納めのお楽しみ「つかみ分け」

愛媛県警巡査部長
仙波敏郎 氏  

運営者 そうすると、学校で習ったことは絵空事だったと。

仙波  そうです。それからね、業者からの歳暮、中元がすごかったですね。

運営者 業者っていうのは?

仙波  パチンコ屋、飲食店、タクシー業界、運輸業界など警察とのかかわりが深い業界の人ですよ。
 僕は最大の警察署である松山東署で繁華街の交番で勤務したことがあるんですが、そこに近くのパチンコ屋から、交番勤務の全員、確か15人の交替勤務でしたが、その全員に正月であれば数の子を1箱ずつ届けてくるとか、ビールの大ケースが交替勤務の各班ごとに3箱くらい届けられるとか、そんなのは当たり前でしたね、当時は。

運営者 知りませんでした・・・。

御用納めのお楽しみ「つかみ分け」仙波  一般の人にはなかなかそういう実態は知られていないでしょうね。僕が30歳くらいの時に宇和島署に赴任し交番勤務したときも、パチンコ屋や電気屋を経営していた有力者から一人ひとつずつホームこたつや、酒の燗をする電気ポットなどが、交番に勤務している警察官の数だけ届けられるなどということもありましたよ。
 歳暮、中元の季節になると、警察官が自分のバイクに積んで持って帰れないくらい届け物がありましたよ。僕は受け取りませんでしたので、他の人に回りましたが。
 そうすると、そういう相手に対しては当然厳しくできないわけです。

運営者 向こうはそれを期待してやってるわけですからね。酔狂じゃない。

仙波  そうです
 それから僕が一番疑問に思ったのは、12月28日の御用納めの日に階級に応じて「つかみ分け」いうのがくるんですね。
 これ、防衛庁でも裏金を同じように「つかみ分け」していたという記事がついこの間、新聞に載っていましたよね。「巡査は2000円、巡査部長は3000円」と階級に応じた現金入りの封筒を直属の課長から渡されるんです。これが「つかみ分け」といわれるものなんです。
 僕は最初にもらったときに、「これなんですか?」と聞くと、「何を言ってるんだ。つかみ分けじゃないか」と。「つかみ分けってなんですか?」と聞くと、「言葉通りだ」で、おしまいというわけですよ。
 当時僕が所属していた警察署は100人ぐらい署員がいました。捜査費だけでも年間2000万円くらいあったと思いますが、そこからつくった裏金の一部を年末にすべての署員に分配金として渡すんです。「裏金作りに協力してくれてご苦労さん」という意味あいですね。

運営者 なるほどー。

仙波  つかんで分けるからつかみ分けなんでしょうね。当時は給料が3万円くらいの時代ですから、凄い金額ですよ。
 僕は現場に配置されて間もなく、署員が偽造領収書の作成をさせられ、裏金作りがおこなわれていること、その、ホンの一部が「つかみ分け」として還元されていることに気付いていました。で僕は、「これは受け取れません」と応えてきました、いつも。だって裏金なんですから。僕は給料以外のものを求めませんでした。
 業者の中元、歳暮も同じで、僕は受け取ることを断ってきましたが、他の同僚たちは慣習と理解していたんでしょう、疑問をもたなかった。僕は自分が不正に関わらなければよいだろうという気持ちだったんです。同僚らの楽しみまで奪う必要はないと考えました。

運営者 そうですね。

仙波  そういう意味では、僕はきれいだったですよ。もっとも僕よりも東君(仙波さんを支える会世話人・元サンケイ新聞記者)の方が物欲がないですけどね。

東   今はね(笑)。

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