仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

仙波敏郎 愛媛県警巡査部長に聞く「裏金告発の行方」




大洲署から火を噴いた裏金問題はいったん鎮火

愛媛県警巡査部長
仙波敏郎 氏  

仙波  会計課長をクビにすることができなかったのだと僕は思いました。することができないんです。

運営者 なぜですか?

仙波  会計課長は裏金づくりの全貎を知る立場にいるわけだからですよ。だから諭旨免職でした。依願退職という形にしたわけです。
 しかし彼は、それを恨みに思ったのかもしれません、地元民放の取材に顔を隠して登場し、「大洲署で捜査協力者のニセ領収書が使われ、裏金作りがおこなわれてきた」と暴露したんです。平成16年5月31日のことです。
 この行為は正義感から出たものではなかったと僕は思っています。告発の中身は正しいんですけどね。だから管理職の連中は、「あいつは裏切り者だ。本来であれば懲戒免職になるところを助けてやったのに、恩を仇で返しやがって」と思っているでしょう。
 それに対してわれわれ現場の者の中には、「よくやった」と評価する声もあったほどです。


テレビ朝日 ザ・スクープ 警察の裏金・愛媛編

運営者 事実関係の調査や、県の特別監査、県議会での追及が行われたようですね。

仙波  しかし忘れもしません、9月17日、県警がこの暴露事件についておこなった内部調査の最終報告書を公表しました。僕も「これで不正が少しは改まるだろう」と期待していました。しかし最終報告書は、「経理上のミスはあったが、私的流用はなかった」というものでした。

大洲署から火を噴いた裏金問題はいったん鎮火運営者 確か、「ニセ領収書を使った捜査協力者への謝礼の支払いは、107件の30万7000円で、会計処理上の問題はあったものの、使途は適正だった。ニセ領収書作りのために、飲食店名のゴム印まで用意していたが、誰がそれを作ったのかは不明のまま。また、大洲署以外に不正な事例はない」という内容の報告書でしたね(その後県警は17万8015円を県に返還)。

仙波  その記事が新聞に載った18日に僕は、比較的よく記事を書いていた某新聞社の知り合いの記者に電話したんです。「報告書は全部嘘、でたらめだ」とね。
 すると彼が言うには、「いやわれわれは県警の発表を載せたまでであって、それが正しいとは書いていない」という返事でした。「もう少し取材してくれないか」と言ったことを覚えています。彼はそのように言いましたが「不正はなかった」という報道は、「事実なのだろう」と県民には受け取られました。

運営者 われわれ取材する立場からすれば、そう言ってくれる人がいたら大助かりなんですけどね。

仙波  がしかし新聞記者は、県警発表を鵜呑みにして、「本当に裏金はないのだろうか?」という疑問をすら持たなかった。
 だって元会計課長は、例外的に「赤旗」の購入費3000円だけは捜査費から払いましたが、それ以外の捜査費の全額が架空の支出であって、残り全額が裏金になっていたとテレビや新聞、雑誌の取材に何度も言ってきたんですよ。それが、こんなとんでもない報告書でおしまいですからね。
 現場の、心ある警察官は、「これで終わりなのか」という諦めの気持ちを抱きました。警察という巨大な組織に立ち向かうのは、象に立ち向かうアリのようなもの。県民を欺くウソの報告書の公表は、犯罪に犯罪を重ねたようなものでした。僕の心に変化が起きたのはこの頃だったのかもしれません。

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