仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

仙波敏郎 愛媛県警巡査部長に聞く「裏金告発の行方」

強い信念と美学を持つ.1


岡本呻也

 東さんは、強い信念と美学を持っていました。
 信念というのは、「かくあらねばならない」と自分が思っていることであり、それを守り通すことです。
 彼はどのような信念を持っていたか。例えば
 信義に背いたことは一度としてない
 と書いています。絶対そうだと思いますね。
 
 それから彼はマージャンが好きだったのですが、
 麻雀は小さく上がるよりも、妥協しないで初志を貫徹
 ・・・して大きな手をつくるという主義だったみたいです。

東玲治 損得で動く小商売をしているわけではない。
 なんてことも書いています。東さんが取材に行くと、偉い人が出てきて、お金を渡されて、「これで矛を収めてくれ」というようなことも結構あったみたいです。だけど東さんは、そうした誘いを断るわけです。信念を貫くためには、「武士は食わねど高楊枝」です。
 一方、例えば田中角栄は、自分の金を受け取る記者しか信用しなかったそうです。それではメディアの側の負けですよね。

 金もないのに頭を下げたがらない
 2度だまされるまぬけより、不遜をよしとしてきた
 とも書いています。みんなに愛想よく思われるよりも、無愛想であろうが相手にだまされず、本当のことを見抜いて、そして相手を撃つ、というわけです。

 誰とでも付き合うが、誰にでも心を許さない。
 支局では1年中ケンカをしていた
 ケンカをするのは、節を曲げないからです。自分が正しいと思うことは正しいと主張するから、結局ケンカすることになってしまうわけです。これは仙波さんもそうだったんじゃないのかなと思うんですけど。
 ですから、正しいことが通らないというのはあってはならない、この信念はジャーナリストに絶対に必要なものだと思います。

 役所に対しては、
 地元紙を影響力だけで優遇するのが気に食わない
 これがまたケンカの種になるわけです。

 もうひとつ、東さんがとても面白いのは、愛媛に土着していたことです。
 百姓の血が流れている
 愛媛のすべてを、まず受け入れる
 県外にいた4年間は旅人のようなものだった
 と書いています。僕は東さんくらい力のある記者だったら、関西圏でも中央でも、相当な仕事ができたと思います。でも彼は愛媛にいるいることを選びました。愛媛県民は、それによる恩恵をかなり受けたと評価できると思います。それは彼が、愛媛が好きだったからですね。

 しかしさすがの東さんも受け容れがたい、愛媛県人の宿弊があります。
 自分の意見を持たない、持っていても言わない、確固たる意見を持たないから、長いものに巻かれようとする。それだけならまだよかったが、今度は徒党を組んで違う意見を持ったり違う立場に立つものをいじめ抜く、伸びようとする者の足を引っ張って喜ぶようなところがある。
 まさに、漱石の『坊ちゃん』の中に出てくるようないやらしさです。「これだけは受け容れがたい」と東さんは書いています。そしてそのようないじめに遭っている弱い者の立場に徹底的に立って記事を書き続けたのだと思います。また、だからこそ仙波さんの側に立ったのでしょう。
 ただし、ここにいらっしゃる皆さんだけは、愛媛県民のなかでも、そのような人ではないと断言することができます。そうでなければ、この場にはいらっしゃいませんからね。

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