仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

仙波敏郎 愛媛県警巡査部長に聞く「裏金告発の行方」

正しい価値判断力を持つ.1


岡本呻也

 東さんは物事の本質にのっとって正邪を見極める、正しい判断力を持っていました。だからとてもケンカに強かった。ケンカをしても負けない。相手をへこませる。なぜへこませることができるかというと、東さんが言うことに筋が通っているからですね。
 それはなぜなんだろうなあ。東さんの物事に対する認識の深さ、突っ込みの鋭さ、これは一体どこから出てくるのからというのは、僕にとってとても不思議なことでした。
 東さんは僕とは違う物事の考え方をしていると思います。僕はどちらかというと分析的なものの考え方をするのですが、東さんの思考回路は、僕とは違うと思うんですね。それでいろいろ考えたのですが、これは「理非曲直を突き詰めて考える」というところにあるのではないのかと思ったんです。

東玲治 物事が善いことなのか、悪いことなのか。この事件は、この先どうなるのか、そのまわりにどのような人々がいて、どのような迷惑を被ることになるのかといったことを徹底的に考えて、物事の善し悪しを判断する。だから人に見えないことが東さんには見えてくるのではないのかと思うんです。
 東さんにはそのように、人に見えない価値判断ができていました。一例をあげると、こういうことがありました。
 当時松山市長だった中村時雄が東京に出張したときに、国会内で田中角栄に会ったらしいんです。
 田中角栄が捕まって、拘置所から出てきた直後だったらしい。中村は、
「角さん、あんたほんとにロッキードから五億円もらったんかい?」
 と聞いたら、角栄は、
「いやいや、もろとりゃせんよ」
 と答えたというんですね。
 中村はずいぶんとこの話が自慢だったらしく、帰ってきてから記者たちに1日中この話をしていたらしいです。それでを東さんがいい加減うんざりして、
「ちょっと待って市長.日本で一番優秀な東京地検が20日以上もかかって口を割らせようとして口を割らなかったのに、院内でたまたま会っただけで、しかも角栄の政敵である福田に近い中村市長に五億円もらいましたなんて言うはずがないじゃないか。
 そりゃ、あなたの支持者であれば、中村市長は田中角栄ともタメで話すことができるのか、偉いのうと感心するかもしれないが、ここにいる記者はそういう連中とは違うんだよ」
 と言ったら、中村市長はしょげて、言葉もなかったそうです。

 記者は、取材で相手には、それこそタメでこのくらい言わないとダメですよ。しかし他の記者は言うことができない。なぜなのか。東さんに比べれば、物事の価値を突き詰めて考える姿勢が足りないからではないかと僕は思うんです。

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