財政は市場原理の外にある

桜内ふみき 氏  


運営者 キリスト教でもイスラム教でも、利子を取って人にお金を貸すという行為は禁止されているんです。それはユダヤ人の商売だったわけで。だけどお金は借りる必要がどうしても出てきますから、ベネツィアなどはわざわユダヤ人を連れてきて、閉鎖的なところに住まわせている。これがゲットーの始まりです。
 だけどジェノバ人は為替制度を発明して、離れた場所でお金を受け取る場合の遅延金といった名目でおおっぴらに利子を取るようになりましたからね。そうやって金融業が発達していった。
 商人というのは全くたくましいものですよ。必要に応じて慣例を破り、現代にもつながるビジネスのシステムを作り上げていったんです。「個人の自立」ということとビジネスの間には、切っても切れない関係があると私は思いますね。
 でもわれわれは、ちゃんとルネサンス以降の人々が作ったシステムを学びきっていないのかもしれませんね。例えば信託についてもそうだし。

桜内  まあ、信託についてはイギリス特有の考え方ですから、大陸法にはない考え方なんです。

財政は市場原理の外にある運営者  日本で、商法と民法に書いてあるのが、取締役の忠実義務と善管注意義務なんですけど、これって判例を調べてみると、受託者の側にとってみるとものすごく緩いんですよね。ほとんど何をやっていてもひっかかりそうにないくらい。
 逆に言うと委託者ないし受益者の権利は相当に制限されていると私は思います。「こんなに実効性がない義務に、果たして意味があるんだろうか」と思ってしまうのですが。

桜内  それは、公会計をやっていても感じることですよ。実際の予算編成のプロセスはまだまだ変わりませんから。

運営者 桜内さんは、予算編成のプロセスについて考えていらっしゃるんですか。

桜内  もともと、会計というのは決算のプロセスです。だけど予算編成へのフィードバックを考えながらやらなければならないということがひとつと、特に行政の場合は、どこにどれだけ公共的な財とサービスを供給すべきかということが市場を見ながら決められないという問題があるんです。

運営者 そうするとそれらのプロセスに、どのようにして善管注意義務を盛り込むのですか。

桜内  それはですね、まず行政の受託者責任を明確にする必要があります。
 国民は納税を通して、政府に経済資源の運用を委託しているわけです。政府は国民から預かった資源の受託者として管理運用する責任があります。

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