アカウンタビリティは「受託者責任」と結びついている

桜内ふみき 氏  


桜内  それでこの「アカウンタビリティ」という概念は、「責任」と非常に密接に結びついていると思います。それが出てきたのはやっぱりルネサンスの頃で、ご存じの通り複式簿記というのは・・・。

運営者 貿易船を仕立てるときに、ベネチアやジェノバの商人が考えついたものですね。

桜内  当時の航海というのは1回1回のプロジェクト形式だったんですね。「だれが出資をしたのか」をちゃんと帳簿につけておくわけです。そして船を擬人化して、入ったお金と出たお金をつけておくという形でできあがっていったみたいですね。当時の複式簿記はB/S、P/Lという観点から見て、今とまったく同じだったんですよ。

アカウンタビリティは「受託者責任」と結びついている運営者 当時は、リスクを負った人間にはキチンとリターンを返すという意味で、儲けの半分は船乗りたちが持っていくことになっていったそうです。残りの半分を出資者で山分けしたらしい。
 ルネサンスというのは、商人の時代だったんです。ビジネスマンは「利益」を追求しますよね。利益というのは、他人の利益か自分の利益であって、みんなの利益というのはこれはまた別のものですが、とにかく「利益」を中心にして「自分と他人は全く別の存在なのだ」ということををはっきりと自覚するところからすべてが始まっているわけです。共同体や他人との依存関係から個人が分離され、それが自由意志の獲得に結びついた時代だったんですね。
 もうひとつルネサンスが凄かった点は、イタリアでは、日本と違って商人が封建領主に勝利を収めたということです。都市が発達することによって、封建領主は周辺の山々に立てこもっていたのですが、自治都市は彼らにムリヤリ都市の中に住むことを強制しました。
 その結果、街の中にやたらと封建領主好みの高い塔を持った城のような建物が建つようになったわけです。そうやって取り込まれた貴族は一部で、残りは都市周辺に残り、これは傭兵になって自治都市や教皇に雇われて戦争ごっこをやるようになりました、つまり野武士ですね。
 つまり、日本のように社会全体を覆うほど大きな武士階級のピラミッドを構築させることを防ぐことができたんですね。
 だから都市の空気は自由だったわけです(イタリアでは教皇領が国土を分断していたことが大きいと思いますが)。

桜内  そうすると、「自分と他人の責任を分ける」ということを、ルネサンス以降の人々は技術としての会計制度を通してやってきたのかなと思うんです。

運営者 面白いですね。

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