「秘伝のタレ」の製法をいきなり公開

桜内ふみき 氏  


運営者 桜内さんは、日本公認会計士協会の公会計フレームワーク検討プロジェクトチームにおいて、「公会計概念フレームワーク」のドラフト作成をされました。
 「公会計概念フレームワーク」とは、公的部門の財務情報作成の指針とも言うべき公会計基準のおおもとを作る挑戦なんだそうですね。たしかに、地方公共団体を中心に「バランスシート」や「行政コスト計算書」を作るという試みは広まりましたが、基準がてんでバラバラで、尻抜けのB/Sを作っているところもあると聞きます。
 発生主義会計の統一的な「公会計基準」ができれば、役所にコスト意識がなく、「税金は自分の金だ」と勘違いしている族議員が跋扈する中で公的債務が野放図に増えていく現状で、おおいに世の中の役に立つと思います。
 これはどういう考え方なのかを伺えればと思います。

「秘伝のタレ」の製法をいきなり公開

桜内  「今なぜ公会計に注目が集まっているのか」というところから話したいですね。
 これはドラッカーが書いていたのですが、産業革命以前は、モノを作るときに、徒弟制度の下でなければ作り方を学ぶことはできなかった。財政について政策を作るためには大蔵省に入らなければ微妙な技術を学べなかったわけですが、産業革命の時に起こった変化のひとつとして、「マニュアル化」というものが起こって、作り方がだれにでもわかるようになったということがあります。
 百科全書を作った時には、それまで知識と思われなかったようなことを書き留めたということがありましたね。

運営者 「技芸の解説」ですね。何でも記述するということでしたから。

桜内  そうすると、それまでは徒弟制度の中に入らなければ学ぶことができなかった作り方を、いきなり誰でもそれを読めば分かるということになったわけです。あるいは学校に行って学ぶことができるようになった。

運営者 「知は力なり」というのは、ベーコンの言葉です。

桜内  ドラッカーはそこからさらに考えを進めて、「マネジメントというのは知識をどのように使うのかという知識である」と言っています。
 最初の段階で知識をマニュアル化して、広く親しめるものにしました。それが産業革命の大きな力になったのですが、表面的にはラッダイト運動なども起こっているわけです。

運営者 財務省も徒弟制度と同様に、予算編成のテクニックを自分たちの組織内だけにとどめていた。一子相伝の秘伝だったというわけですね。そこでいろいろと、自分たちがおいしい思いもできた。だって他に知っている人がいないわけですから。

桜内  そうですね。ところが公会計制度を整備することによって、その「秘伝のタレ」の製法をいきなり公開してしまうことになるかもしれない。財務省の元同僚たちからすると「何てことするんだ」と思っているかもしれませんね。

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