マスコミは「必要であれば利用するべき対象」

中林美恵子氏


 運営者 ところで、アメリカの国民は、「ジャーナリズムは市民社会の利益を守る存在」として、ジャーナリストを信頼していますでしょうかね。それからジャーナリズムは、アメリカの政治に対してプラスの影響を与えているでしょうか。非常におおざっぱな質問で恐縮なのですが。

 なぜこういうことを聞くかというと、日本の国民は、ジャーナリズムが健全な市民社会のために必要な機能であるということをほとんど認識していないんです。
 だからジャーナリストが信用されていない。それゆえに情報がリークされないんです。「自分が情報を漏らすことによってみんなの利益になる」という確信があったとしても、ジャーナリストが信用できなかったり、情報の意味をきちんと理解できなかったら、情報をリークするのは自分にとって極めて危険なことですよね。だからジャーナリストの信用というのは非常に大切なんです。
 この国においてはリークされる情報というのは、敵対勢力が紙爆弾として流してくるものばかりです。それはジャーナリズムの健全性を半分しか担保していない情報だと思うんですね。それが僕は非常に気にかかっているんです。

 中林  予算委員会を担当しているジャーナリストというのは、もう何十年近い年月にわたり一貫して同じ分野の仕事をしていますから、こちらとしてもどういう人かわかっています。リークする側にしてみれば信用ができるというレベルです。
 また専門性をもったジャーナリストはテクニカルなことでも理解ができるほど知識をもっています。特に予算の場合は単純でないことが多く、裏で数字がどのように変形されたかなど、ややこしい問題がいっぱいあるわけです。それでも予算を長く取材している人であれば、スタッフよりも詳しいという人が少なくありません。だからそういう人には議会側の人間もインタビューしてもらいたいし、きちんとこちらの意図を伝えれば正しく書いてくれると期待できます。

 運営者 そうすると、何か効果があるんですか。

 中林  書いてもらうことには効果があります。国民に対するアピールになるだけでなく、自分の名前が出ていないリークの場合でも、公聴会などで論戦を張るときに、「このような報道が世間ではあった」と示して注意を喚起することもできます。活字に残るということは大切です。
 議会では、マスコミというのは、「必要であれば利用するべき対象だ」と認識していますね。ただし共和党はマスコミからひいき目に報道してもらえないケースが多く、「マスコミは偏見が多いからフェアでない」という議員が沢山います。
また国民の側ですが、マスコミを信じて鵜呑みにするほどナイーブではないと思います。それでもマスコミは政治にとって最も大事な媒体ですから、オフィスに報道官やそのアシスタントを何人も揃えてマスコミ対策に必死になります。

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