行政改革は国会の役割か

中林美恵子氏


 運営者 次は、行政改革なんですが、アメリカでは行政改革を行うのは国会の役割だと考えられているでしょうか。

 中林  そうですけれど、国会だけでやろうとしても、大統領府の理解もそれなりになければなか上手くはいきません。現実的には難しいプロセスです。
 だけど、USIA(インフォメーション・エージェンシー・国際交流のための外郭団体)を国務省に統合するときには、議会が主導して行いました。「何年後には統合しなさい」と法律で決めてしまうわけです。
 ギングリッジ下院議長なんかは95年に、「教育省をなくししましょう、商務省を撤廃しましょう」という法案を実際に提出しています。これはどちらも実現しませんでしたが。

 運営者 それはどういう動機によっているのでしょうか。

 中林  教育省や商務省は政府がコントロールするべきではなく、もっと事情を知る地方政府や商業活動をするプライベート・セクターが主導権を握るものだから「国家統制は、無駄だから無くしましょう」という動機です。

 運営者 日本の国会議員が、「役所がムダだからなくしましょう」と言ったという話はあまり聞いたことがないです、特に与党は。まあ、石油公団くらいかなあ。

 一応日本でも、橋本内閣の改革の目玉である行政改革の成果として、去年の1月から省庁統合が施行されました。実際のところはほとんど人の削減には結びついていないと思うんですが、見た目は数が減ったことになっていますし、多少は前進になっているでしょう。例えば経済財政諮問会議もこの時できましたから、ほんのちょっとくらいは。

 でも、これを主導したのは一体どこなのかというと、国会でもなんでもなくて、通産省なんですね。96年の秋の総選挙の時に、行政改革案を使って通産省が橋本首相に食い込んだわけです。そして首相の下に行政改革会議を置き、その審議結果に基づいて、中央省庁改革基本法案を作り、国会で通したわけです。
 その結果として、大蔵省から金融部門を分離し、大蔵省の看板を下ろさせ、通信行政に関して戦争をやっていた郵政省を解体するという大戦果をあげたわけです。
 そうすると国会の役割というのは、この中でほとんど何もないわけです。そもそも国会が発案した行政改革ではないわけですから。しかし行政府が行政改革をするということは、泥棒に「自分を縛る縄を編め」と言っているのとまったく同じことだと私は思いますね。
 ことほど左様にわが国では、すべてのことは霞ヶ関で決められている。

 霞ヶ関と自民党の部会との間で、法案が提出される前に調整が行われていますから、与党としては国会では何もしなくてもOKなんですね。議会を蚊帳の外に置いて、政治的な資源配分は霞ヶ関と与党との間で行われているわけです。それは彼らにとっては非常に都合がいいことでしょうが、そのような形で国会を形骸化させることによって、国民の権利は大きく踏みにじらていると思いますね。
 93年に細川政権ができ、自民党が野党に転落したときは、その構造を変えて国会が実権を取り戻す最大のチャンスだったかもしれません。しかし政権を取った日本新党や社会党にはそのような高邁な理念はなかったですね。その一方で、政権転落の悲哀を味わい尽くした自民党は、「もう二度と政権の座から転落しないぞ」という固い決意を固め、役所と結託してますますこの構造が強化されるという結果に終わったように思えます。

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