競争がなければ、組織は腐敗し国益を見失う

中林美恵子氏


 中林  そう言われてみれば思うんですけれど、それは日本独特のこととも言い切れないですね。組織に流動性がなくなれば、競争が別のところで働くし「知」が邪魔になります。だからそうした弊害を避けるため工夫して作ったのが、今のアメリカの三権分立の政治システムだと思うんです。

 そして権力を分散させるだけでなく組織を活性化させるためにマネージメントの分野で試行錯誤を重ねています。私がアメリカの大学院で勉強したのは国際関係と安全保障だったんですが、ビューロクラシーの理論というのがあって、実例としては官僚的な縄張りがアメリカの軍事力と国益に大きな弊害を与えているというものでした。 陸軍においても海軍においても、結局自分たちの組織に対する忠誠が、情報や戦略の共有まで妨げてしまうなら、国家にとって危険な状況が生まれます。どんな国家でも競争がより公正な部分で行われなければ、組織は腐敗し国益を見失うのでしょう。

 運営者 そういう自己目的化を乗り越えるためにはどうすればよいかが問題なんですね。

 中林  日本の場合、「競争を嫌うのがこの国の独特な文化だ」と言い切ってしまったら思考停止に陥ります。いつかは間違った概念をぶち壊さないと前に進めないだろうと思います。

 運営者 しかし、日本がこれだけダメになっているにもかかわらず、聞く耳を持っていないですよ、彼らは。
 ましてやちょっと景気が回復の兆しを見せたら、どんなに説得しても無理ですね。
 「自分たちが変わらなければならない」などとは、露とも思っていませんよ。

 45歳以上の人はなかなか変わることができない。50歳以上の人は確実に変われない。だからこの国は絶望的な状況になってきてると思います。組織のロジックを乗り越える方法を考えたとしても、「こんなの受け容れられない」と拒否しちゃうんですよ。
 だってみんな、見るざる言わざる聞かざるになっちゃってますからね。その方が自分自身を守れるし。変化が起こったら今までの自分のやり方を変えなければならないわけですよね、その自信はまったくないわけです。
 そのいちばん顕著な例は、オフィスへのパソコン導入初期に起こりました。パソコンが使えない上司は、部下にもパソコンを使うことを禁じたんです。それで日本の初期のパソコン導入は、ワンテンポ遅れたと私は思いますね。本当にできる上司であれば、自分が使えなくても部下にはパソコンを勧めますよ。

 それは一例ですが、ほとんどの場合において、新しい「知」を得る、自分が今まで知らなかったことを知るというのは、まったく歓迎されないことなんです。それはなによりも、自分が変わるのが嫌だからなんですよ!
 こんなことを力説しているのは、我ながらバカみたいなんですけれど、これをは僕の観察の結論ですよ。

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