ナレッジ・イズ・パワー

中林美恵子氏


 運営者 すごいなぁ、このシステムを日本に導入するだけでも、ものすごく国会議員の知識の幅が広がるはずなんですけどね。

 中林  しかもその勉強の結果が法案につながるし、議員をやっていると知的収穫を経験できるのですから実に楽しいと思いますよ。知識が得られるということは生きる醍醐味ですから。

 運営者 中林さんがそのような意識をお持ちであるということはわかりますが、アメリカの議会スタッフは一般的に、「新しい知を得たり、貪欲に吸収したい」と思っているんですか。

 中林  思っています。ものすごく思ってますね。
 「生活のために」というよりは、「国会に身を置くことによって自分自身が進化していくことができる。知的になれる」と。

 運営者 それではアメリカでは、「知を得る」ということは価値があることだと考えられているのでしょうか。

 中林  そうです。ナレッジ・イズ・パワーですから。

 運営者 それはよく使われる言葉なんですか。

 中林  私もワシントンで毎日聞かされていました。

 運営者 そうするとそのような「知」への重要性がよく認識されているからこそ、スタッフを充実させ、情報を集め、公聴会を開いて必要な知見を集めるわけですね。
 それでその「知」というのは、法律の中に活かされるものなんですか。

 中林  ええ、もちろん活かされます。
 法律というのは一人で作れるものではなくて、通常は委員会のマークアップにかけられて法案のたたき台が形を現します。その際にはマイノリティーも含め各議員が修正案を委員会レベルで付けていきます。つまり本会議と同じスタイルで、まずは委員会の中で審議されるわけです。ですから、各委員やスタッフがあらかじめ法案のバックグラウンドをちゃんと勉強しておかなければ、マークアップできないということになってしまいます。

 そして修正案の正統性を本会議で述べるのにも、またマークアップや本会議で議論をするのにも、たとえば「公聴会で私が質問したときに、グリーンスパンがこのような答えをくれたじゃないか」と、信用ある人物の証言を自分の案の正当性の武器にさえ使います。
 議論をするには多くの武器が必要ですし、それは知識や論理性とも関連します。それらがなければ自分たちの主張を通す戦争には勝てません。特に反対側政党にこてんぱんにやられてしまいます。それで世論が傾いて議席が減ればマイノリティーに転落です。議論や国民にアピールする力は、ある意味で政治のお金以上に重要なのです。

 運営者 今の話は、共和党と民主党の立場の違いがあるから対立が起こり、それが「戦争的」であるという表現なんだと思いますが、その中で僕が一番面白いなと思うのは、そこに議論があるという事実ですよ。つまり日本であれば、どうやって対立に決着をつけるかというと、メンツとか数の力なんですよ。

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