法案を持ち込む時は議員の好みを読め

中林美恵子氏


 中林  良い悪いという判断は、議員の能力や立場によりけりです。だから案を持ち込む場合は、どの議員を通して提案してもらうかを絞らなければ、たぶん日の目を見ることもないでしょう。
 議員は往々にして自分のイデオロギーとか特別な地元の事情を抱えていますから、それを把握することが第一歩です。
 例えばテキサス州選出のフィル・グラム上院議員だったら、テキサス大学で経済を教えていた教授ですから、自分の経済哲学をそれなりに持っています。風見鶏になりにくい人です。彼がどのような主張を今までしてきたかということは委員会の議事録を見ればわかります。頑固で主張を持った発言が、すごく面白い。そういうわけで、法案を持ち込む側にしても、「彼だったらこれは必ず取り上げてくれるだろう」という判断ができるわけです。

 あるいは私の元上司であり予算委員会の委員長および筆頭議員であったピート・ドメニチ上院議員の例も同様です。
 あるシンクタンクの研究員(議員の元スタッフでもあった人)が、アメリカ人の貯蓄を増やすための貯蓄優遇税制法案を持ちかけてきたことがあります。その元スタッフの研究員は、議員のスタッフと一緒に、「この法案を如何に現状の政治にフィットさせるべきか」というミーティングにまで参加しました。上院議員の好みに合うように法案をつくっていくわけです。
 その案は「USA Tax」という名前で本会議に上程されたのですが、法律にはなりませんでした。だけど大きな一つの法案として新聞紙上には取り上げられたし、対案としての役割を果たしたのです。
 だから「何が良い案か」というのは議員によるわけですね。スタンダードな良い案というのはあるわけがないんです。

 良いアイデアであれば、必ず委員会では議論はされますよ。公聴会を開くんです。

 運営者 委員会の審議と公聴会の関係はどのようなものだと考えればいいんですか。

 中林  公聴会というのは文字通りヒアリングです。議員たちがこれから自分たちの責任で法案を提案をしたり審議をするときに、「知識がある人から話を聞いて勉強しましょう」ということなんです。

 ものすごくいいアイディア、「これは国民的なレベルで本当に取り上げられるべきだ」と考えられるものであれば、それは少なくとも委員会スタッフの目には止まります。あるいは個人事務所のスタッフの注意を引くでしょう。
 そうすると、「こういった議題を論じるとしたらこの委員会の権限範囲だから、まずはそこでヒアリング(公聴会)を開こう」とか、または「これを法案にするなら、委員会の権限範囲に従ってこちらの委員会に打診しよう」という話になります。それでそこの委員会のスタッフと個人事務所のスタッフとが、提案者の話を聞くわけです。

 運営者 議会のスタッフが非常に能動的に活動していることがわかりますね。お役所仕事じゃないな。

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