「アメリカとの契約」 財政均衡を巡る戦い

中林美恵子氏


 運営者 もうひとつ僕が非常に興味があるのは、アメリカではここのところずっと歳出削減が大きなテーマになっていて、「財政支出を減らすべきである」というのが議会の中でテーマとされていましたね。現実性のない法案ができあがって何度もだめになりましたが、その度また新しい法案が提出されてきました。

 対して日本では、「歳出削減をしよう」などということを国会議員なり政党が言うということはここ最近までなかったことなんです。言っても本気ではない。橋本政権下の 97年末に通産省主導の「行革」に対抗する大蔵省の後押しで「財政改革法」が成立しましたが、政権が変わって98年末にはこの法律は凍結されました。小泉内閣では「国債発行枠30兆円」の死守が精一杯。それも来年はほぼ無理であろうと言われています。
 つまり、国会議員は誰も歳出削減したくないと思っているということでしよう。

 中林  国会議員にとって歳出削減を主張しても何のベネフィットにもならないし、地元民にもほめられませんね。利益誘導もしないことになったりしますから。

 運営者 それはね、ブキャナンの「赤字財政の政治経済学」にあるように、政府財政の赤字というのは雪ダルマ式に増えていくことに、古今東西なっているわけです。
 にもかかわらずアメリカでは、グラム=ラドマン法のような財政均衡に関する強力な法律が通るのはいったいなぜなんでしょうか。これはものすごく不思議なことなんですけどね、私にとっては。

 中林  ひどい財政赤字を立て直すには最終的には議会の法案を使うしかない、アメリカはそういう「制度」になっているということはおわかりいただけたと思います。
 そしてそういう議会が動いたということは、ある意味で国民の理解や後押しが議員たちとしては必要であったはずです。どうしてそんな理解が得られたのかは研究の余地がありますが、財政均衡法を実現することが選挙でプラスになる時期があったのは確かです。

 運営者 しかしそれは、日本ではあり得ないことだと思いますね。例えばムネヲがですよ、選挙の時に根室で、「私はこれ以上国家財政の赤字が増えるのは、将来世代に対する負担が耐えきれないレベルになると判断いたしますので、ここは皆さんには耐え難きを耐え忍び難きをしのんでいただくのが適当であると思います。私に清き一票をいただきたい」、と選挙演説するとは想像だにできませんね。

 中林  アメリカでは、特に94年の選挙時に圧勝した70人余の新人たちは、ギングリッジという後の下院議長の下に結集し「アメリカとの契約」という公約を掲げて選挙戦を戦い圧勝しました。これを94年の共和党保守革命と呼び上院と下院の主導権が一気に共和党に移った選挙を指します。彼らの第一の公約が、{財政均衡}
でした。つまりこれは、財政均衡が選挙に結びついた現実的なケースだったんです。

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