政党間の競争があるから議員の暴走に歯止めが掛かる

中林美恵子氏


 運営者 そうすると今度は委員長の話ですね。
 委員長は強い権限を持っているわけですが、彼は「どのような判断をしなければならない」と考えているでしょうかね。まず自分が国会の中で大きな責任を負っているということを認識しているでしょうか。

 中林  もちろんしています。

 運営者 それは、誰に対する責任になりますでしょうか。

 中林  それは2つあって、ひとつは自分の地元民に対する責任です。
 2つ目は、国家全体に対する責任です。
 そして委員会で発言するときは、常に国家全体に対する責任があるという建て前を持っていなければなりません。

 運営者 でも、建て前を意識してるだけ立派ですよね。
 ムネヲなんかは、参考人招致の時に、「領土問題の原点である根室へ利益誘導するのは当たり前だ」と平気で言っていましたから。全体利益なんてカケラも考えていない。共産党の議員が思わず、「語るに落ちた」といったくらいで。そこにどういう問題があるのかということをムネヲは理解していないわけですよ、国会議員であるにもかかわらず。

 中林  それで日本の場合は物事が通ってしまうんでしょうか。
 もしアメリカでそのようなことがあったら一体どうなるのだろうかと考えてみたんですが、もし一人の議員がそのような激しく偏った法案や修正案を出そうものなら、ここぞとばかり反対側の党の議員たちが激しい攻撃をかけまくるでしょう。
 つまり、法案や修正案が出た時点で、まだ執行の段階でもないのに、かなり騒がれるはずです。そうなると、議会を取り仕切っている院内総務が、「これはわが党が次の選挙で叩かれる要因になる」と判断する可能性が大きいでしょう。そうすると同じ党の中の議員がその法案を引っ込めるようにやんわりとプレッシャーをかけたり、または強引に取り下げさせられたりという事が起こってきます。極端な自己や地元の利益追及は結構シニアの議員がしたりしますから、「別の機会にもっと正当性のある便宜を図りますよ」という言い方で、とにかく挙げた拳を下ろさせるようにするということがありますね。

 行政府に対して議員が働きかけるのでなく、立法権限を持った議員同士がそういう調整を行うのは、政党間に競争が成り立っているからです。行政府の長であるホワイトハウスを奪えなかった党でも、立法府では十分に法案作成の主導権や大きな影響力を行使できるのですから。
 というわけで力のバランスからして、行政府に対する議員の露骨な働きかけというのはアメリカでは殆どありません。
 一般にお願いに行くのは、行政府の方なんです。委員会の委員長、院内総務、党全体という個性の強い枠組みの中で責任の所在がはっきりしてしまっているので、次の選挙で大きなマイナスになるようなことは避けたいという作用が働きます。

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