成立率5%、1万件の法案をいかに淘汰するか

中林美恵子氏


 中林  議員たちは、自分やほかの人々の提案する法案や修正案を扱い、自分の名前を付ければ本会議に提出できる権限があるわけです。特に上院では本会議に法案が出てきたら、その修正案として法案自体には全く関係のないことでも付け加えていくことさえできます。議員たちの権力は選挙で選ばれた以上、絶大です。
 自分が作るだけではなくて、自分を支持してくれる人たちが作った法案や、あるいは自分がこれはいいなと思った法案は、自分の好きなように変形させてどんどん本会議に提出してよいのです。

 運営者 それは面白い。

 中林  だけど法律として成立するのはその5%程度です。どのように法案が淘汰されるかというのが、アメリカの立法プロセスの冷たい部分でもあります。
 その淘汰の段階にまず委員会の存在があります。
 一人ひとりの議員というのは、個人事務所を持っていて、地元住民に対するサービスを一番の優先事項として仕事をしています。それは当然ですよね、だって地元を代表して中央に送られてきているわけですから。「地元の意向を中央に伝える」という大事な大事な任務があるわけです。個人事務所の仕事はそれが中心になるわけですが、事務所費用もスタッフのコストも地元と中央を結ぶ役割を全うするため、すべて公費から支出されています。

 運営者 日本で国会議員に地元から陳情するのは、新幹線を引くとか、新しい橋をかけるとか、国立の施設をつくるといった、主に土木的なことですが(笑)、そのレベルのことをやっていると考えていいんでしょうか。

 中林  まあそうですね、そのレベルのこともありますし、あるいは地元から国政に対する提言であるとか、たとえばメキシコとの間の国際問題とか、電波や電力といった資源についてどうするべきかとか、税制をどうするかといったことを、自分の州の利益を中心にして提言するということはあります。
 法案のほかにも、地元の高校生がやってきて議員にいろいろなことを請願したり、それから「地元の大学でこういうプロジェクトをやるので予算を取ってきてほしい」ということも持ち込まれてきますよね。

 運営者 日本では、国政に対する地元からの提案というのは、それを法律にするわけではなくて、役所に押しこむんですけど。
 そういう予算関係のことはどのように対処するんですか。

 中林  予算を勝ち取る必要があるものについては、13本に分かれた歳出法案の中に書き込んでいかなければならなりません。予算の作成も立法行為であり議会が執り行います。役所(つまり行政府)に持ち込んでお伺いを立てる必要は全くありません。反対に行政府の役人が議会の立法官僚(スタッフ)に説明や陳情にやってきます。
 予算に関しては議会内でも複雑です。ただ言えることは地元からの提案も経費がかからない独立した法案の作成ならいいのですが、歳出の増加が織り込まれたりすると、上院の場合は議席の5分の3(60票)を集めなければ、ポント・オブ・オーダーという動議が出されて審議はストップします。またフィリバスターという演説による審議妨害作戦もあり、独立した一般法案ですと13本の歳出法案に修正を付加するのよりも難しい場合がほとんどです。

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