みんな思考停止の中にどんどん入っていく

中林美恵子氏

 中林  「文化」という言葉を、分析の対象として捉えれば何の問題もないと思うんですが、日本語で「文化」というと、思考停止するための言い訳に使われてしまうから、私はわざわざ「制度」という言い方をしていますが、でもそれは、まさに文化です。つまりみんなが共通に理解していることなのですから、ルールやシステムに置き換えられなければなりません。

 運営者 よくわかります。
 会社の中に入ってしまえば、あとは好きなことができるという夢のようなシステムなんですよ、これ。上司の横暴にとにかく耐え続けて、長い間居座って偉くなれば、車と秘書と個室とゴルフの会員権がついて、銀座で飲み食いができる。カイシャというのは社員のための生活の場であって、何かをプロダクトアウトしようとか、付加価値をつけようというという場ではないんです。会社の目的は、自分たちの生活の場なんですね。その様に見事に完結しているシステムです。

 中林  みんなそうですよね。最初はそうでなくても、みんな思考停止の中にどんどん入っていくような気がします。で、結局は自分の利益だけを考えるようになってしまう。評価の仕方が間違ってるんでしょうかね。

 運営者 評価の仕組み自体がないんですよ。評価をしてはならないんです。人がやってることに対して文句を言ったり、「アナタのやり方は間違っている」などと指摘すること自体がご法度なんです。
 このシステム中での対人認識の基本は、「私はあなたの存在を認める、だからあなたも私が何をやっていても文句を言うな」ということなんですから。すごい混同があると思うんですけれど、まあそういうことです。
 それともうひとつは、「支配=従属関係」です。ピラミッド組織の中で、上の者は下の者よりも絶対優位であり、何をしても許される。この構図の中に自分たちを当てはめて、初めて安心することができる社会なわけです。

 あっ、この国の商習慣には基本的に、「パートナーシップ」という概念はありませんからね。
 だから、相手との関係がどちらが上でどちらが下かということが確定されるまでは、コミュニケーションが成立しないんですよ。ただ、一旦それが確定すると、物事が非常にスムーズに動き始めるということがありますね。やばいことが起こっても歯止めがきかないんですけれど。それと、それが生産的な動きかどうかはまったく別問題ですけれど(笑)。

 中林  そしてそれは、ルールとして成文化されているものではない。だけどみんなそれがルールだと分かっている。

 運営者 暗黙知ですね。「制度」の表面から隠された部分です。
 そうした仕組みの中で、今の恵まれた日本では、みんなが自分の利益を追求して生きています。リーダーすらそうなんです。

 中林  それを自覚的にやっているならまだしも、思考が停止しているというのが大変な問題だと思います。

b.pnga.png