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原子力空母ジョージ・ワシントンに乗ってきた! 日本人初単独取材

ジャーナリスト 芦川淳 氏

現物から米海軍の建艦思想を逐う

現物から米海軍の建艦思想を逐う

ジャーナリスト 
芦川 淳氏 


運営者 つまりアメリカが持っているのは、単に空母を運用する能力だけではなくて、ロジの厚みをつくり出す国力があるということですね。

芦川  そうです。やはりいまでも自衛隊のロジの部分は軽視されるというか、追いついていないですからね。やりたくても、軍隊でない軍隊にそこまで予算が回らない。G8のなかを見ても、GDPに対する防衛費の割合は日本がダントツのビリなんですよ。一時期、「世界第2位の防衛費」だなんて言われましたが、物価や国勢を反映したものではないでしょ? 全然リアルな数字なんかじゃないですよ。

運営者側 なるほど。

芦川  ジョージ・ワシントンについて書いた本(『空母マニア ジョージ・ワシントンのすべて(講談社/三推社刊』)は、そうしたアメリカのロジの厚みとか、底力、システムの秀逸さなどを、誰にも分かりやすく実感してもらえるように作ったんです。表層的な情報はどうでもいいから、ジョージ・ワシントンという空母、つまり器のなかに詰まっているものの凄さを知って欲しかったんですよ。
 誌面で艦のビッグさを表現するためのバーチャルツアー・ページを作ろうと思ったんですよ。そこでカメラを構えて、ジョージ・ワシントン艦内の廊下をダーッと写真を撮りながら突き進んでみたわけですよ、探検隊風に。

運営者側 そりゃ面白いですね。やっぱり端から端までかなりあるんですか?

芦川  司令部機能とかある03甲板の廊下を、ダダダダと歩きながらハッチごとに写真を撮ってみたんです。だいたい10メートルから15メートルごとにハッチがありますから、そのハッチごとにパチパチと。これで、艦内を歩くとどんな風に見えるのかをやってみたかったんですよね。でも、途中の半分ぐらいに息が切れてやめました。それでもカット数は多くなりましたけどね。
 だいたい空母の艦内って慣れない乗員でも普通に迷子になるくらいひろいんですから。ひとつのフロアに昇降用のラダーが60カ所以上あるんですよ。目の前の区画で行き止まりの場合は、そこを下の階か上の階からパスして乗り越えるんですが、その時点でどちらに進んでいるか分からなくなったりするんです。
 そうした艦内のリアルな世界も伝えたくて、廊下を連続カットで撮ってみたりといろいろやってみたわけです。なので数字にもいろいろこだわってみました。発艦のときに使うカタパルトや、着艦時に活躍するアレスティングのシステムなんかもクドイくらい紹介してます。

運営者 われわれは水蒸気カタパルトを持ってませんから、興味深いですね。

芦川  次に作られるフォード級の空母からは、リニアモーターを利用した電磁カタパルトになるみたいですよ。電力を喰うということで開発が難航してますが、なんかとか成功にこぎ着けそうです。
 ちなみに誌面では、カタパルトやランディングエリアのサイズ、それからアングルド・デッキの角度なんかについても触れています。これまでしっかり書いた本がなかったんで、かなり詳細に調べました。キティーホークは11.3度で、ジョン・Fケネディでは10.7度。それがエンタープライズになると11.2度になって、その後のニミッツ級の8艦はすべて9.3度になっています。もっとも角度のあるアングルデッキを持っていたのは後期のミッドウェイで、これは11.9度ありました。

運営者 ずいぶんトリビアスな感じがしますが。

芦川  そうですね。そんな数字のなかにも、その艦を建造したときの考え方が読み取れるし、その艦の持つ個性なんかも感じられます。飛行甲板の左右の張り出し幅が大きくなれば、面積全体に余裕が出来ますから、アングルド・デッキの角度が浅くなります。それって、器としての艦の重さ、つまり重心の取り方とも密接に関係してきます。それでいくと、ミッドウェイなんて無理矢理に改装しちゃったから、すっかりアンバランスですよ。
 パイロットからすれば数度の違いでもけっこう違和感あるでしょうし、原子力空母なら煙突がないからアイランドの生む後方気流の影響も少ないでしょうね。
 その本は、そんな数値も盛り込むことで、読んでるうちにジョージ・ワシントンと他の船との違いがわかるように書いたんです。碇の鎖を収容するアンカールームのチェーンの組み方まで書きましたよ。55個のリンクでひとつのチェーンを作って、それが12個つながってるとか。そういうのが好きな人からみるとなかなかの情報だと思いますよ。

運営者 空母研究にはもってこいと。

芦川  ありがとうございます。ただですね、さきほどの質問に立ち返って、日本が単純に空母を持てるかという話になると、ジョージ・ワシントンのようなマンパワーは、いまの自衛隊ではまったく提供できないだろうというのが結論ですね。米海軍の持つ原子力空母、いやキティーホークみたいな通常動力型の空母でさえ、それを1隻運用するだけで、すべてのリソースを使い尽くしてしまうかもしれないくらいです。 保有するだけならできますけど、トータルで考えればまったく無理。せいぜい軽空母、それも2万トンを下回るぐらいの規模でないと。

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