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原子力空母ジョージ・ワシントンに乗ってきた! 日本人初単独取材

ジャーナリスト 芦川淳 氏

米軍の持つ明確な目的意識とロジ感覚

米軍の持つ明確な目的意識とロジ感覚

ジャーナリスト 
芦川 淳氏 

運営者 他にジョージ・ワシントンを見てきて、日本が学べる点は何がありましたか?

芦川  彼らの持つ目的意識ですね。
 彼らの目的は、世界で12隻の航空母艦も3つのレイヤーに分けて同時展開できる能力を維持すること。どこで何があっても対処できること。地域司令官が問題なく作戦を続けられることなんです。
 その中身については、政治が決定することだから、何でもいいんです。政治目的のための能力は完全な状態にしておく、ということですね。

運営者 そうですね。

芦川  それと比べると、日本の場合は、冷戦終結以降、目的を失した状態が続いていると思います。何をやるべきか政治が明確な方向性を打ち出せずにいます。たとえば海外派遣任務を恒常的に行うとした場合、人的リソースをどこに求めるのか? そこで国内での大規模災害派遣を行ったら完全に部隊機能はパンクします。そんなときに有事となったら・・・・これでは自衛隊のある意味がありません。
 そんな政治の混乱が続くなかで、自衛隊は粛々とマイナス予算に応じ、人員を減らし、統合化を進めてきました。海上自衛隊にしても、自衛艦隊司令官の下に戦力を集中させて、運用の効率化を図るようにやって来ました。だけど、その先に見えるものがないんです。

運営者 日独伊軍事同盟締結前の話の話でね、締結2ヶ月前にリッペントロップ外相が佐藤・来栖大使に、「自分はドイツが何を欲するやの点については明らかなる認識を有するも、日本の企図が奈辺にありやに関しては遺憾ながら明確なる知識を持ちかぬる次第にして、両国間の協力も・・・まず日本が果たして具体的に何を希望せらるるやを承知いたしたし」
 と聞いたけど、大使はただ同盟を結びたいとしか答えなかったそうですよ。リッペントロップも困ったでしょうね。

芦川  わけわかんないですよね。それじゃ半分バカ扱いですね。悔しいけど。金を持って店に入ったきたのはいいけど、ニヤニヤしているだけで、何が欲しいか言わないみたいなもんですね。
 ジョージ・ワシントンの補給科がらみの話に戻りますが、米軍では戦闘部隊と後方支援部隊のうち、実際には後方支援部隊を主役に考えているところもあります。手厚い後方支援があってこそ戦闘部隊が活きるということをまず最初に考えますから。
 だけど日本の場合は、まず戦闘能力を維持する。そのために必要な後方支援を行うと考えてますから、考え方がまったく逆なんです。だけど戦闘継続能力のない部隊がいくらいても仕方がない。

運営者 その考え方は、前の戦争から日本は変わってないですよね。もっとすごいのは、戦闘機の方が人命よりも貴重だと信じられていたわけですから。
 パウエルが湾岸戦争の時のことを『山動く』という本に書いていて、湾岸戦争は50万人を砂漠に送り込むという作戦だったわけじゃないですか。その本で強調されていたのは、戦争というのはロジで戦うということです。それを見て僕らは、「われわれには用兵以前の問題があるな」と思ったわけですよ。
 イラク戦争もそうなるはずだったんだけれど、ラムズフェルドが動員をケチったために、現在の泥沼状態につながっているわけで。

芦川  ジョージ・ワシントンでは、乗員全体の3分の2が後方支援要員なんですよ。空母の攻撃能力の中核である戦闘機のパイロットは5%以下の存在で300人以下しかいません。

運営者 もしも日本が軽空母を持ったら、そういう比率になるんじゃないんですか。

芦川  そうなるはずなんだけど、その比率で現在の人員を割けるかというと、これは難しいですよ。差し出せる能力はないかもしれない。2個飛行隊弱の見当でおおむね30人のパイロットがいたとして、単純計算でそれをバックアップするのが500人以上ですよ。これの教育ソースだけでも大騒ぎかも。

運営者 つまりアメリカが持っているのは、単に空母を運用する能力だけではなくて、ロジの厚みをつくり出す国力があるということですね。

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