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原子力空母ジョージ・ワシントンに乗ってきた! 日本人初単独取材

ジャーナリスト 芦川淳 氏

「独占取材」の申し込み方

「独占取材」の申し込み方

ジャーナリスト 
芦川 淳氏 


芦川  それで艦長室ではパイロットスーツを来た人物が歓待してくれて・・・「最初は写真で見た艦長と違うな」と思ってたら、肩にバリっと星が付いてるじゃないですか。「おーっ」と思って話を聞いてみると、「ようこそ、わが艦隊を見てくれ」と。つまり艦隊を指揮するジョージ・ワシントン空母打撃群の群司令なわけで、てっきり最初は艦長かと思っていたの少々驚きました。

運営者 彼は艦長じゃなくて、艦隊司令だったわけですね。艦長はどうしたんです?

芦川  艦長はナビゲーションブリッジ(航海艦橋)でお仕事中だったみたいです。
 それで、ラッキーなことに、こういう取材の時は取材チームが5チームとかゴッチャになるんですが、われわれはたった2チームだけで、しかももうひとつのチームはカナダの料理番組の取材。各艦艇で料理指導役をやっている民間の方を追っているドキュメンタリーなので、我々のチームとはまったく仕事が被らない。これ以上ないという素晴らしい取材の環境でしたね。

運営者 しかし、その料理番組、面白いのか、面白くないのか何だか分からない番組ですね。(笑)

芦川  艦のほうからすれば扱いは楽でしょうね。逆に我々のほうは「日本から来た連中だ」ということで、多少の緊張もあったと思いますよ。

運営者 そりゃ、そうでしょう。これから、「原子力空母きたる」ということで手ぐすね引いて待っている市民団体や反体制派の皆さんの所に、わざわざ荒れるホーン岬を回って、広い広い太平洋を横断していこうとしているんだから、「われわれは一体バカなのか阿呆なのか」と思っているところに、芦川さんたちが行ったわけですからね。

芦川  こっちの取材依頼としては、「空母ジョージ・ワシントンを余すところなく紹介する。フラットな目でドーンと報道する。だけどそれには全部見せてもらなきゃいけないから、ぜんぶ見せてください」と書きましたからね。どこかの国のマスコミと違って、特定の国の軍隊についてはなぜか積極的に報道しないなどということはなしで(笑)。

運営者 米軍側は、事実をそのまま書くのであればしょうがないという考え方をするはずですからね。

芦川  だから、「曲がったことは書かないから全部見せて」とお願いしたら、OKしてくれたわけです。それで独占取材が実現しました。
 それとその依頼のなかで「できれば入港に近い時期がいい」と書いたんですよ。

運営者 それはなぜですか?

芦川  入港が近い艦は、猛烈な訓練も終わっていることもあって、乗っている連中も気持ちに余裕ができてるんです。そういう時期に見せてくれというのが一番いいんです。それは海上自衛隊でも同じですね。
 やっぱり彼らと一緒に入港するのは楽しいですよ。乗員たちは久しぶりの陸と休暇を楽しみにしてるんですから。気持ちも軽いからいろいろ話してくれるし。
 それと、飛行甲板での取材はかなり危険を伴うんですが、入港が近いとこれも若干、緊張が解けていていい感じになりますね。あまりアドレナリン出まくりの状態だと、魚河岸に迷い混んだ素人みたいになっちゃいます。だから、通常は最初に飛行甲板に出るための講習があるんですが、我々の場合、コスチューム(とことん安全に配慮した格好)もしっかりしていたので「お前らわかってるみたいだな」と早々とOKサインをもらえました。多少でも余裕のあるときで良かったです。
運営者 しかし、よくそこまでスンナリ取材ができましたね。

芦川  やっぱり1年越しの計画になっちゃいましたね。来る時期は早くからキャッチしていたんですが、相手は大西洋側に配備されてる艦なので取材は難しいんですよ。
 理由はいくつかあるんですが、ひとつはキティホークみたいに多くの時間を第7艦隊の所属艦として過ごしている艦とは違って、在日米海軍が窓口として機能しづらいのが大きいですね。在日米海軍司令部は、親部隊がハワイの米太平洋艦隊司令部なりますから、艦が太平洋にいればハワイだろうがサンディエゴだろうが、それほど難易度は高くないんです。だって横須賀からハワイ経由で話を通してもらえばいいんですから。

運営者 ところがジョージ・ワシントンは太平洋にいない、と。
芦川 そうそう、これまでジョージ・ワシントンは大西洋と地中海を言ったり来たりで、大西洋が主な住処でした。基本的には、米艦隊総軍か米欧州海軍司令部のどちらかの指揮統制下にあるので、ハワイとはまったくと言っていいほど縁がないです。艦隊も第2艦隊と第6艦隊、たまに第5艦隊という形でしたからね。なので、横須賀経由であるかぎりはハードルがすごく高くなっちゃうんです。

運営署 結局、どうやってそれを突破したんです?

芦川  面倒くさいから直接、国防総省に(笑)。

運営者 ひえー、そりゃまた大胆ですねえ。

芦川  そっちのほうが確実だし、やはりトップで許可が出れば、あとは軍隊の命令系統を下っていくだけなのでかえってスムーズなんですよね。
 ただ、これにしてもKYなことをしちゃうとすべてが水の泡になるので、時期を本当に慎重に選びました。早すぎでもいけないし遅すぎてもいけない、感謝祭は避ける、クリスマスは避ける、ドック入りの時期は避ける・・・もう薄氷を踏むように動きました。結局、いろいろトライした結果、某所にある広報セクションの元締めを相手にいろいろ相談し、最終的に許可がでたのが取材の1ヶ月半前でした。

運営者 昨年の秋にもなんかジョージ・ワシントンの取材映像を見たけど・・・。

芦川  あれは横須賀市議会とそれに近いマスコミの方々が合同で行った視察ですよね。確か昨年の10月末ぐらいだったと思いますが、ノーフォークから出発して、艦には半日もいられなかったと聞いてます。
 あのときは取材の調整をやっている最中だったので、正直言って、一瞬、ウボワーと思いましたよ。でも、こちらはあくまでも単独での取材を狙っていたし、逆に前例を作るという意味では。10月のその視察が私にとっては追い風になりましたね。それからイソイソと準備をしてノーフォークまですっ飛んでいったわけです。

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