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中国軍は日本を侵略し放題?

ジャーナリスト 芦川淳 氏

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運営者 そうすると、そのありがたい政府の解釈に従って日本側のガス田の周辺で護衛艦くらまが沈没しちゃったとしましょう。生存者を救出しないといけませんね。

芦川 そういう交戦状態のときに救助活動を中国が認めますかね?
 お互いにけん制し合うでしょうけど、100人ぐらいの生存乗員が海に浮かんでいたとして、助けられるかなあ。そこに助けに行くと中国の軍艦が撃ってくる可能性もあるわけですから。むしろ外交チャンネル使って「すみません、おやめ下さい」と丁寧に頼んだほうが・・・

運営者 外交チャンネルなんかつかってる時間ないじゃないですか!

芦川 (笑)その時に、お互いに海軍魂を発揮できればいいんですけどね。シーマンシップというのはこういうときに潔さがあって、「救助をしたいので一時戦闘中止」と先方に通告すると、たいてい救助させてくれるものなんですよ、本当は。

運営者 普通の海軍であれば、それはあると思うんですよ。だけど僕は中国海軍にはそれはないと思います。

芦川 そこまで言いますか・・・同感ですが・・・(笑) 
 ですから、そのような事態になることを避けるために、事態が緊迫しているときには、護衛艦の艦長は敵艦の攻撃範囲には入らないように振る舞うんですよ。実際には中国側にしても、無用な緊張を避けることを考えて同じようにすると思うんですが、最初から海上自衛隊をナメてかかってきたら話は違いますね。
 もし日本側の経済水域において、中国が強行掘削を行うとすれば、それを守るために中国の軍艦が派遣されることは容易に想像できちゃうわけです。そうなると、それに対して海上自衛隊、もちろん保安庁もですが、その海域に近づくことが困難になると思います。
 そういうわけで、実際にはなかなか偶発的なドンパチは起き難くなるという一面もあったりしますけどね。

運営者 ということは、中国のやりたい放題じゃないですか。

芦川 そうそう、そういうことです。なにも変わらないなら、そうなっちゃう。つまり海上自衛隊は、能力的には中国の艦艇をやっつけることもが出来ていたとしても、こちらからは発砲できないし、近づいたらやられちゃうわけですから、近づけないんですよ。
 例えばヘリコプターを飛ばして上空からレーダーで監視するといったことはできますけど、中国の艦隊が日中中間線を越えて日本側に入っている場合には、中国側も「やや、日本が近づいてきたぞ。攻撃に備えろ」と考えるでしょうから、海上自衛隊は気押される可能性が高いわけです。

運営者 つまり今のところ、中国はいつでも日本を侵略し放題ということですね。

芦川 限定されたケースでの話なので、これがイコール侵略し放題となるわけではありませんが、そうなる可能性は容易に見えちゃうと言えますね。自衛隊がこれだけ手足を縛られている情況では、まともな国家ならOKなことが無理になるってことです。
 こういうときにできることと言ったら、決して不測の事態とならないように、積極的で密な情報収集をやっておくことぐらいでしょうか。
まずは地上の電波傍受施設や電波情報収集機を利用して中国の艦艇の発する通信情報を傍受して分析すること、それと潜水艦が常時張りついて、中国艦隊の隻数や活動状況をモニターすることが必要になります。もちろんいずれも24時間態勢です。もちろん偵察衛星による監視も欠かせません。

運営者 ありがたいことというか、偵察衛星はありますからね。

芦川 ただ、それらをしっかりできる情況にあるかというと、実はやはり心許ない状態だったりしますよ。人と物が足りてないです。
 春暁の話に限定すれば、地上の傍受施設は奄美諸島にひとつ置かれているのでそれで済むとして、航空機による電波情報収集は、航空自衛隊の入間基地の部隊か、海上自衛隊の岩国基地の部隊があるのですが、機数が少なく人員のローテーションにも問題ありです。
 それと、偵察衛星については、日本周辺を満足のいく形でモニターすると、最低も4基、予備もいれると8基という数が必要になるのですが、いまは都合2基しかないです。これだと撮影できる間隔が空きすぎるので情報収集の密度に難が生じてしまいます。
 とどのつまり、できることにしても、それに意外に穴が生まれてしまうんですよね。潜水艦にしても、そうりゅう型のように長期潜行のできるタイプが多ければまたいいんですが・・・。

運営者 そうすると日本にできるのは、なんとかして収集できた情報を世界に発信して、「中国がこんなふうに日本を侵略してきたよ」ということを国際世論に訴えかけるということしかできないわけですね。

芦川 そうですね。それも、この前の尖閣諸島での漁船の追跡のようにビデオを撮ることができないので、作図して示すしかないということになります。衛星からの撮影で入手できる画像にも限りがありますし、自国の衛星のデータだとあまり公開したがりませんよね、国防当局としては。
 だから「中国が日本の領海内で資源の掘削をしていて、そこに艦隊を集結させていますよー」という画を得るのは非常に難しいでしょうね。
 航空機からの撮影も可能でしょうけど、日本の領海近くに突っ込んできて「正当な活動をしている」と言い張る方々が相手ですからね、どういう反応を取るかわかりませんし、それだけじゃ活動の証拠だけで、活動の情況がわかりませんね。

運営者 しかもそうした情報海外に発信する場合には、日本が持っている情報収集能力がどの程度のものなのかということが、外国に知られてしまうというデメリットもあります。

芦川 そうです。だからあまり手の内を見せるやり方はとらないですよね。二重三重で高い能力をもった情報収集活動が出来ていれば、チラ見せぐらいはいくらでもできるわけですが。

運営者 それでも状況に応じてやるしかないですね。アメリカだって小出しに出してるわけだから。

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