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もし中国が日本の経済水域に攻めてきたら

ジャーナリスト 芦川淳 氏

03.JPG大和が進水したとき、湾の水位がかなり上がったと、目撃した私の小学校の担任が言っていた。


運営者 イージスシステムですか。
 中国には「なんちゃってイージス」があるんですよね。

芦川 中国の「なんちゃってイージス」は、艦隊防衛じゃなくて、個艦防空、要するに防空範囲の広い艦を造り、それを数隻で組み合わせて全体的な防空範囲を拡げようとする考え方です。これは旧ソ連海軍のシステムを取り入れていますね。っていうか、実際にはそのまんまなんですけど。
 だから、イージス艦のように、艦が艦隊防衛システムのメインコンピュータとして機能して、他の艦とデータリンクを介してひとつに繋がっている・・・なんてことはまだ実現できていないはずです。レーダーシステムとか細かい機能については、まずは形から入るようにして技術習得を進めているはずですが。

運営者 じゃあ艦船同士のデータリンクがないんだ。レベルが低いですね。

芦川 ロシアから購入した艦艇同士、ソヴレメンヌイ級の4隻だけのデータリンクなら出来ているはずですよ。ロシアがちゃんと使えるように教えていればの話ですが(笑)
 その他の艦は恐らくボイス・・・要するに音声通話による戦術データのやりとりしか実現できてないと思います。だから中国製のなんちゃってイージスよりも旧式のソヴレメンヌイを虎の子扱いにしているんですよ。たぶん中国海軍はこのソヴレメンヌイのデータリンクシステムの技術をパクろうと人海戦術でリバースエンジニアリングしようとしているんでしょうね。
 もちろんそれはロシアにはダマテンでやってると思います。あの新幹線の件と同じで、彼らの得意技ですよ。ロシアも半分はそれを分かってて売ってると思いますが。

運営者 中国らしい(笑)。
 そのレベルであれば、中国海軍の空母を撃沈するのはむつかしくないように思えます。
 そうすると中国海軍が威力を押し立てて日本に攻めてくるというのは単純にはむつかしそうですね。

芦川 艦艇同士だけの話であればそう考えることできますが、実際には制空権を得てからの話になりますから単純ではないです。仮にいま中国が空母を戦力化してあったとしても、いきなり艦隊を押し立ててくるようなことは、ないでしょう。そんなパワーを持っているのは米海軍だけです。

運営者 しかし事はそう簡単ではないわけで、今度は中国と日本の間に軍事衝突が大きそうなケースを考えて、具体的にシミュレーションしていただきたいと思います。
 想定ケースです。東シナ海の日中中間線に近接する白樺(春暁)ガス田は、中国が勝手に掘っている効率の悪いガス田なのですが、中国が戦争を仕掛けるために、日本側の経済水域での掘削を強行しようとした場合に、どういったことが考えられるか。
 掘削の前に周辺海域での緊張が高まってきて、中国が海軍の艦艇を出してきて、日本側も護衛艦を出してにらみ合うということになると思うのですが・・・。

芦川 中間線とか領海の是非の話を抜きにして考えて、日本との間のグレーゾーンに中国が手を出してきた場合には、これは自衛隊を出すべき案件になってしまいますね。
なぜなら、そこまで戦略的に重要な拠点に自国の施設を設置するにあたっては、警察組織ではなくて、軍事力による警備が必要になるからです。彼らの言う国外からの干渉をもっとも警戒すべき相手とするなら、必然的に軍隊の出番となるでしょう。
 もちろんそこに至るまでに段階は踏むでしょうけど。例えば、日本国内の世論が「中国はけしからん!」という論調に染まれば、これまでは警備艇やら監視船を使用する案件ばかりだったのが、いきなりワンランク上の緊張状態に入るというわけです
 そうなれば、確実に中国は軍艦を置いて警備を行うようになります。春暁についてはギリギリ日本の主張する日中中間線の外側に位置するので、いまだ政治問題です。しかし、その内側に入ってくるとなると、一気に軍事的な問題へと変質してしまいます。
 これをもし日本が甘受するとなると、それはつまり沖縄本島までを差し出したに等しいことになってしまうので、ストップをかけなければなりませんね。

運営者 この前の尖閣諸島の一件で、国民も目覚めつつありますからね。

芦川 結果的に日本は日本の経済水域を守るために、予備的ではありますが準軍事的な行動を取り得ざるをえません。日本側も海上自衛隊が護衛艦を出すしかなくなります。そうすると緊張はさらに高まると・・・。

運営者 でも、いくら日本の権益を犯しているからといって、日本側からは撃つ理由はないですよね。

芦川 確かに自衛隊からは撃てませんね。他国のケースなら、EEZ内にガス掘削用のラグなんぞ建てた日には空爆の対象にもなりかねませんけど、基本的には自衛隊よりまずは警察、つまり保安庁の仕事です。
 ここで保安庁の巡視船が掘削基地から攻撃を受けて大破したなんてことが起きたら、海上警備行動発令で自衛隊の出番となり、有事一歩手前の緊張度となるでしょうけど、日本は「専守防衛」ですから自衛隊側から撃てるとは思えません。
 仮に海上保安庁の巡視船が、臨検を行うとして掘削ラグに接舷しようとした際に、中国側の艦艇から発砲されて銃撃戦に発展、巡視船が危機に陥ったという情況があれば、巡視船を助けるために護衛艦が発砲するというケースはありえますね。ありそうでないレアケースだと思います。

運営者 とどのつまり、よほどのことないと日本側からは発砲してはならないということですね。

芦川 そうです。もっとわかりやすく言うと、日本側に被害がなければ、しかも隊員の生命に関わるような事案が発生しなければ撃つことはできません。有事下ではないですから、艦長の立場で言えば、自艦が明白な被害を受けなければ発砲することはできないでしょう。

運営者 砲塔をこっちに向けてロックオンしているだけではダメなんですか。

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