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「国防」について考えてみよう part2

ジャーナリスト 芦川淳 氏

対潜哨戒機に必要なのは高速性能

ジャーナリスト
芦川淳 氏   

運営者 たしかにP-3Cは「いつまで飛んでるんでるんだ」と思いますが。プロペラ機だし。

芦川  だってP-3Cはよくできてますから。固い機体に固いエンジン、それに優秀な対潜用器材。加えて練度の高いクルー。問題は、海域に進出する速度が遅いということです。「あの付近に潜水艦か何かがいるらしい」となったときに、素早く飛んで行けないし、単位時間あたりのパトロール面積も制限されます。
 また、P-3Cは4発機ですよね。今は東京からニューヨークに行くのに、双発機の直行便があるじゃないですか。軍用機は確かにそれなりの耐久性が必要ですが、民間機はそれよりも安全性を求められます。それなのに、双発機が1万4000キロ飛んでるんですから。だったら何でいまさら4発なんだということです。これはそのままP-Xにも当てはまります。

運営者 でも哨戒機は長い時間飛ばなきゃきやいけないじゃないですか。

芦川  だから、エンジンの数が多いということは、それだけリスクも高いんですよ、故障の確率だって上がるんですから。じゃあ、P-Xを双発機として開発することができたのかというと、そこまでのエンジンを造る能力が日本にありません。そこでなんとか開発の進んでいる小型エンジンを、その昔、どこかで見たような設計の機体に4つ搭載して開発するという無茶をしたわけです。ここまでリスクを追う意味がわからないですよ。
石川島播磨は、F-15J戦闘機のエンジンをライセンス生産していますが、そこでの仕事は非常にいいです。米軍も驚くような改良を開発を行っています、

運営者 じゃ、「やればできる子」なんじゃないですか?

芦川  それでもゼロからはできないということなんでしょうね。そこまで規模の大きな開発するベースになる部分、予算はもちろんとしてテストヘッドや試験空域など、ないない尽くしですよ。

運営者 それで、対潜哨戒機の必要性について教えてほしいのですが、何に使うんですか?
 以前はソ連の潜水艦を監視するためでしたが。

芦川  対潜哨戒というよりは、不審船を含めた広い範囲の哨戒任務、つまりパトロールですよ。
 最近のセンサー類は、開発が進んだ結果、性能が大幅に上がっています。それを有効に使うには、高速で広い範囲をパトロールできる機体が必要になります。でもP-3Cにはこれ以上の高速性は求められません。もう一段上の性能を持つ哨戒機があれば、時間単位の移動距離が大きく、それだけ広い範囲を哨戒することができるわけです。

運営者 必要性はわかりますけれど、昔みたいに200機も要るんですかね。

芦川  あれは当時のソ連の勢いに対抗するには必要だったんですが、今は半分ですよ。100機体制ですから。そのうちの半分を交代させればいいでしょう。だけど、プラットフォームがだめだったらしょうがないですけどね。

運営者 どうも僕は、対潜哨戒機をたくさん持っていたことが、われわれにとってプラスだったのかどうか判断つかないですけどね。

芦川  結局、アメリカの片棒を担がされる形で仕事をしたから、海上自衛隊は、対潜哨戒能力についてものすごい能力を持つに至ったわけです。ところが今や潜水艦の高性能化によって、それが揺らいできているようなんです。

運営者 どういうことですか?

芦川  見つけられなくなっているんです。

運営者 あれま。中国の潜水艦くらいは見つけられるんでしょ。

芦川  いや。原潜もそうですが通常動力艦でも静かなものは、もうぜんぜん見つけにくくなってきています。潜水艦の静粛性が驚くほどアップしてるんです。
 だから哨戒能力は向上させなきゃいけないし、哨戒機の高速性、ジェット機の展開能力は重要になるんです。

運営者 じゃあしょうがないかなぁ。

芦川  私の予想では、このP-Xの開発は同時期開発のC-Xの成功をもって、頓挫というか、幕を閉じるかするのではないかと考えています。機体に問題がみつかって初飛行も遅れているし(岡本注:いちおう飛びました)、ユーザーである海上自衛隊のほうでも、この機体を使ったらなにが出来るかという、用兵の部分で煮え切ってないと言われています。ただ、もし計画がポシャッたとしても、エンジンや機体の開発から得た経験の価値は大きいと思いますよ。

運営者 PXの行く末に幸あれということで・・・(笑)。

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これはあくまで呑み話をまとめたものです。

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