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「国防」について考えてみよう part2

ジャーナリスト 芦川淳 氏

次期対潜哨戒機はかっこわるい

ジャーナリスト
芦川淳 氏   

運営者  もうひとつの海自の新装備の目玉は何ですか?

芦川  次期対潜哨戒機(P-X)です。
 武器というのは非常におもしろい一面があって、いい武器はえてしてカッコいいんです。機能性とデザインというのはかなり一致します。大戦後に乱発された米空軍の戦闘機なんか、理論が煮詰まらないうちに勢いで造ったようなものなので、やっぱり格好が悪い。もっとダイレクトに言えば弱そう(笑)

運営者 ヲタクが喜びそうな話ですね。

芦川  先日、川崎重工の開発を行っているP-Xが、報道陣にお披露目されました。で、その見た目の印象というと、うーん、開発している人には悪いけど、お世辞にも格好いいとは言えない。むしろヤボ。
 同じく川崎重工で開発の進むC-X(次期輸送機)が700系新幹線だとすると、このP-Xは初代新幹線の0系に近いアナクロさがあります。

運営者 でも、C-Xがかっこよく見えるのは、C-130が鈍重だからじゃないんですか?

芦川  C-130は一見すれば鈍重に見えますが、長年に渡って磨き込まれてきた機能美みたいなものがあります。改良に改良を重ねて傑作機と呼んでもいい機体になっているし、さまざまなバリエーションもあって、元々のシンプルさが輝いていますからね。

運営者 こりゃまた失礼しました。

芦川  C-130は、中型輸送機としては、機能がうまくまとまっていると言えばいいんでしょうか。過不足なしって感じで。

運営者 航続距離が短いじゃないですか。

芦川  それは仕様ですから。長距離を飛ぶ大型輸送機とは仕事の内容が違いますよ。

運営者 そんな、下手なゲームメーカーの言い訳みたいな(笑)。

芦川  でもね、P-Xに目を向けると。そういった機能美が見えないし、なにかいろいろなところに中途半端さを感じてしまうんですよ。これでどういう仕事をするか、という部分も含めて。例えば、エンジン。このP-Xは国産機としても初の4発ジェット機なんだけど、機体と併せて開発中のエンジンに難ありと言わざるを得ない。石川島播磨(現IHI)の製作ですが、どうも開発がうまくいっていないという話が伝わってきます。 高性能なジェットエンジンは、その国の工業技術の集大成みたいなところがあって、さまざまなレベルの工業に波及するコア・テクノロジーなんです。ところが、日本のレベルはトップにはぜんぜん及ばない。ジェット練習機に使う小型のエンジンを自国開発できるところまでは来ていますが、それより大型の戦闘機とかのエンジンになるとまるで無理。

運営者 どうしてですか?

芦川  基本となる技術の蓄積がない。戦後、航空開発再開までかなりのブランクがあったし、いま現在の問題で言えば、空中給油機を保有していないので、長期間の試験飛行を重ねてデータをとるということができないんですよ。欧米の有力メーカーは、まったくゼロからのトライ&エラーを続けていまに至っていますが、日本のメーカーにはそれには遠く及んでいません。経験も理論もどちらも手が届かないんです。外国製エンジンの大事な場所に使われる部品のサイズや部材の厚みには、理論だけでなく、それに多くの経験を足して見出された数値が採用されます。こういうのは多くの実験をやらないとわからない。

運営者 あれっ、空中給油機と言えば、この前、各方面から文句を言われながらも、やっと買ったんじゃなかったでしたっけ

芦川  ええ、確かに買いましたけど、まだ、おうちに届いてません(笑)。先に買い物したイタリアも困ってます。
 アメリカだと、試作したエンジンを4発ジェット機の中の1発と代える形で搭載して、空中給油をしながらずっと飛ばしてデータを取り続けるんです。そうしてコツコツと開発を進めていくわけですけど、開発環境も予算も日本にはないですね。 日本人は、見よう見まねでチャチャチャと造り、さらにそれをもっと高性能化するという得意技はあるんですが、ゼロからとなると難しい。
 機体の開発にしたってそんなノリです。対潜哨戒機は、機内に搭載される機器が重要なので、搭載するためのプラットフォーム、つまり機体には、使ってよし、飛んでよしの高い信頼性をもったものが求められます。だから、いまのP-Xのように、新規で開発するエンジンを、これまた新規で開発する機体と合わせるというのはリスクが大きすぎる。現用のP-3Cなんか、そういう意味で、モロに手堅い設計になっていますよね。機体も頑丈だし。

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これはあくまで呑み話をまとめたものです。

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