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「国防」について考えてみよう part2

ジャーナリスト 芦川淳 氏

 

日本の防衛産業の儲からない仕組み

ジャーナリスト
芦川淳 氏   

芦川  ただ、メーカーからのアプローチのしにくい世界なので、たとえばシャープが作っているメビウスみたいな端末で、防水と衝撃に対応する端末を、陸上自衛隊のシステムにインテグレートできないか、なんてことが難しいんです。

 自衛隊からの仕様書にしたがったものをメーカーに作ってもらって、できあがったものを改善して一品モノを開発して、完成したらそれをダウングレードしていくというやり方ですから。

運営者 よく理解できないのですが、それはなぜですか?

芦川  一番の理由は防衛産業が儲からないからですよ。なぜなら、自衛隊側の仕様に沿ったものしか作らせてもらえないから。完全受注生産で、設計図をゼロから起こさなければなりません。まず仕様ありきで、「こういうことはできませんか」という研究から始まりますから。

運営者 アメリカだったら、軍隊の装備品が、日常的なものでもやたら高いということが問題になったりしますが、そんな感じですね。

芦川  そうそう、「性能を満たしたもののなかで一番安いのを選ぶ」というのができない。
 それから防衛産業が儲からない原因のひとつとして、原価を積み上げて、その上に利益を載せるという計算方式なので、どんなに生産努力をしてコストを下げてもメーカーの儲けは一定という、つまらない制約もあります。

運営者 原価+5%らしいじゃないですか。スケールアビリティとか、スケールメリットがない世界ですね。そんなんじゃ、アホらしくてやってられませんよ。

芦川  「海外輸出をすればよいのではないのか」という声もありますが、実はそれだけじゃない。
 スウェーデンやイギリスみたいに輸出しようと思ったところで言うほど売れてない国もあるし、ソ連だってのべつなくなしに外国に売っていたけど貧乏なままだったし。ソ連の場合は物々交換が多かったせいもありますけどね。
 実際は「コストをいかに下げるか」にリンクさせなければならない話なのに、そこは考えないんですよ。
 それに自衛隊は、各メーカーが自社で製造ラインを持つリスクについて関知していませんから。たとえば年間で1輛とか2輛の発注しかない装甲車のために、メーカーは契約によってラインを維持しなければならないわけです。フレキシブルに運用できる砲兵廠や被服廠といった生産ラインが自衛隊にあれば、話も違ってくるでしょうね。

運営者 なるほどねー。
 僕がなぜ軍隊に興味があるかというと、目的達成のためにあらゆる努力を払うという一点に賭けている組織であるということが一番の理由なんです。軍隊は、そうした純粋な目的指向性を持った組織で、生活重視型の日本企業とは違う側面を持つわけです。しかしその半面、コストにはあまり興味を払っていないという印象を持っていました。
 でも芦川さんの話からすると、何かを作るときに「コストを下げよう」という考え方は、一応持ち合わせてはいるわけですね。


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これはあくまで呑み話をまとめたものです。

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