エリア全体をビオディナミの相互作用で強くする
「天才の国」イタリア自然派ワインの真実

エリア全体をビオディナミの相互作用で強くする


川村武彦氏+山田恭路 氏

山田  その考え方は、彼の造っているブドウ畑を見てみるとよくわかるね。

TAKEカワムラ まず現地に行って最初に目に入ってくるのが、ブドウ畑なんかじゃなくって鬱蒼とした森なんです。
 何回行っても、「この道でよかったっけ?」と悩みますからね(笑)。山を上って、また下って行かなければならない。すり鉢状になった土地の中に、丘があって、林があって、大きな角のある牛がいて、馬がいて、林業もやってるし、小麦やオリーブオイルも作っていて、ハムや肉を売って、その横に申し訳程度にブドウがあるという感じです。100ヘクタール以上ある土地の中で、ブドウ畑は11ヘクタール。ワインの生産も5万本に足りないくらいだから、ほとんど商売にはなりません。
エリア全体をビオディナミの相互作用で強くする
 ここで食べるものは、すべて地のものです。鶏だってブロイラーなんかいないわけ。地鶏、地牛、すごいのは地豚なんて大学と共同してDNA鑑定をやって、ここにしかいない古い品種を絶滅させないように飼っています。そうしないと本来の自然に戻らないわけですから。
 林の中を歩いていると皮が離れた木がいっぱいあるのですが、これはコルク樫です。コルクなんかは自然に生えてる。オークの樽も小麦も砂糖も、そこで作られているものは全部ビオディナミ。
 そのエリア全体が、ビオディナミのデメターの認証を受けています。

山田  僕はオーナーのダニエレ氏に「ビオディナミでブドウ畑にまく調合剤(プレパラート。薬草などからつくり、より生物が力を持つために与える漢方薬のようなもの)を豚や牛にも食べさせているのか」と聞いたら「ヤマダ、そういうことじゃないんだ。その場所の生態系の中で完結するようなワインを造ってるんだ」と怒られたちゃった。

TAKEカワムラ 要は、自然をより本来の形に戻してあげること。そうすると、それぞれが相互作用で強くなるんです。本来はそうあるべきです。僕も彼に会ってから、ブドウだけを作っている人を見ると「それでいいのかな」と思うようになりましたよ。
山田  僕も世界各地の蔵元を訪ねたけれど、ここまで徹底してやっているところは初めて見たよ。ダニエレ氏はブドウ品種のことを話していても、二言目には「エネルギーだ」と言ってるからね。
 フランスのオリヴィエ・クザンとマズィエールの故ラブイグとダニエレは自然派でエネルギーを重視している造り手の三巨頭なんだけど、方向性が全然別の方向を向いている。
エリア全体をビオディナミの相互作用で強くする
TAKEカワムラ でもそれは当然ですよ。フランスとイタリアは気候が全然違うから。だから方法が違うのも当然でしょう。

山田  フランスはビオディナミをやっている蔵元は北の方にも多いんだよ。寒いし、気候が厳しいので、哲学的にビオディナミに入ってくる人が多い。それに比べるとイタリアの方は自然に入ってる人が多いんじゃないのかなぁ。

TAKEカワムラ イタリアの造り手が今まで自分がやってきたことをちょっと見つめ直して、「自然にやろうか」と考えたら、環境がそれを許すからできるんですよ。太陽がさんさんと照っていて、雨が少なくて、寒暖差がありますから、いい意味で一歩逆戻りすればいいだけなんです。
 ここで造っているワインも、なんにもしていない自然なワインでね。

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