「お付きの者」の傍若無人


飯坂  その逆に日本では、「お付きの者」なんていうのがいたりして、これがまたパブリックスペースでも大変無礼な行動をとるんだよ。

 例えばアークヒルズのエレベータなんかだと、アークヒルズクラブにVIPを案内するお付きの者や広告代理店の者などが、一般の人たちに対してまことに傍若無人な振る舞いをすることがよくありましたよ。「あんたにとってはVIPかもしれないけれど、周りの人間にとっては関係ないんだよ」ということなんだけど、回りの人たちを払って乗せようとしないとかね。別にSPでもないのに。
 VIPの権威を体現したつもりになっちゃってるんだな、これが。

運営者 うーん。オペラ座には偉い人も来ていると思うけど、そういうのは見たことがないですよね。
 だいたい、お付きの者なんていないですよ。ウイーンの楽友協会の前にジャガーで迎えに来てる人がいて、あれはものすごく目立ってたけど、べつに家族が迎えに来ているという感じだったし。いかにも威張っているお迎えというのは見ないなあ。裏のほうでやってるのかなあ。

飯坂  僕も見たことないなぁ、ウォルドルフ・アストリアでも、プラザでも。

運営者 結局日本では、所属組織のピラミッド構造を、パブリックの場にまで持ち込もうことしてるということですね。

飯坂  基本的に、その場によって、個人の置かれている立場や関係を変えることができないということなんでしょう。
 自分は所属組織のピラミッドのある地位に住んでいて、そのピラミッドごと移動する、ということですよ。

運営者 VIPも「自分は篭に乗る立場になっちゃったんだから、ちゃんと静かに篭に乗っておかないと周囲の人たちが困るだろう」と考えているんでしょう。

飯坂  それもまたアジア的な感覚で、韓国でも中国でもありそうですね。

運営者 だから、「お互いが相手を個人として認め合う」という関係というのは、日本にはホントにないものだなと思ったんですよ。

飯坂  そもそも、個人の感覚というのがまだ出来上がっていないんでしょう。だって、個人の中には子供は入らないですよ。それもまた、日本ではまだ個人というものがないんだなというのは今回の六本木ヒルズの事故で思ったことですよね。

運営者 みんな、個人ができあがる前の子供の状態なんですよ。
例えば、友達をつくるには、相手を個人として認めなきゃいけないでしょう。 

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