歌舞伎座と不倫のドレスコード



運営者 オペラの幕間の楽しみというのは、来ている客の着物を見るのも面白いんですよ。

飯坂  そういうのは日本にはないねえ。

運営者 逆に日本では、何を着て行ってもいいんですよ。それはそれでまた、バカにした話ではあるんですが。

歌舞伎座と不倫のドレスコード でも日本でも、歌舞伎座というのは、戦後はお見合いのメッカだったんですよ。お見合いだからみんなちゃんと着物を着てくるわけです。だけどそれっていうのは、その場の雰囲気を保つとか、共有するというパブリックな目的のためにドレスコードが発達したということとは違うと思うんです。自分自身の目的のためだけに着ているだけなんじゃないのかなと思うんです。
 だから、お見合い文化がすたれた瞬間に、歌舞伎座も何を着ていってもいいということになってしまっている。

飯坂  ドレスコードというのは、個人の確立以前にはありえなかったような気がしますけどね。

運営者 関係ないけど、某大企業で、派遣社員がいっぱいはたらいているセクションがあって、そこで不倫騒動があったりしたわけですよ。そうすると、しばらくしてから派遣社員の人たちを含めて全社員にドレスコードが言い渡されたわけです。「華美な格好をしてはならない」と。

飯坂  それがなぜドレスコードに行きつくのかよくわからないけど。

運営者 派遣の女子社員が華美な格好してるのが不倫に結びついたんだろうという判断なんですよ。

飯坂  不倫する奴は、どんな格好をしていたって不倫するだろう。

運営者 だからそれが、まじめな会社ですから、不倫を認めるわけにはいかなかったんですな、きっと。

飯坂  「謹厳なるわが社の社員は不倫などするはずがない、華美な格好をして来ている派遣社員の方が悪い」という理屈ですかね。

運営者 そう言い出しかねないから怖いんですけどね。
 ドレスコードをしっかりすれば、不倫が防げるという考え方は、個人の意思の存在を前提としない考え方なわけですから。本当であれば、不倫は個人個人の意思によって起こるので、どんなことをしても防ぐことはできないと考えなければならないはずなのに。

飯坂  アダムとイブがリンゴを食べたのは、蛇のせいだと。

運営者 そう。そのアダムとイブとか楽園追放の絵も、今回満腹するほどいっぱい見ましたよ(笑)、クラナッハとか。 


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