ルターと音楽の意外な関係



運営者 ことほど左様にね、理念というものが世の中を前進させるのだと僕は思うし、その証拠は宗教改革とロシア革命に見ることができると思うんです。
 で、話を先に進めると、1521年にヴォルムス帝国議会でルターは皇帝カール5世から自説を曲げるように強要されますが、それを払いのけ、教皇の権威をはっきりと否定し、「自分は聖書と己の良心以外に何ものにも縛られない」と断言しています。これは、西欧近代の成立にとって決定的な瞬間だったと僕は思います。この瞬間において、バチカンは否定され、その反面で「個人」が完璧に確立しているわけですから。

ドナテッロドナテッロ 結果として、皇帝はルターの国内での権利をすべて剥奪してしまったので、彼はザクセン選帝侯フリードリヒの庇護のもとに身を寄せ、ヴァルトブルク城にかくまわれることになりました。その間9ヶ月、ヴァルトブルク城の粗末な一室で、以前は高貴な身分の囚人を入れるために使われていた部屋だったと書いてあったと思うんですが、そこで彼は新約聖書をギリシャ語からドイツ語に翻訳するんです。これが印刷されて広がっていくことになったわけです。
 これは圧倒的なエポックであり、すさまじい効果があったんですね。

 で、ルターの肖像画はルーカス・クラナッハがいっぱい描いてるんです。友達だったんですね。その肖像画を見ると、どうも僕には強欲そうなじじいにしか見えないんですけれど(笑)。

飯坂  山っ気があったのかもしれませんね。

運営者 それと、ルターは音楽を認めたんですよ。信仰のために必要だということで。それが教会のための音楽ということになって、バッハにつながり、現在の音楽にまでつながっているわけです。

飯坂  なるほど、それで楽器も信仰のために作るということですね。

運営者 そうそう、イタリアで最後に訪れた町が、クレモナというところで、ここはストラディヴァリウスの町ですよ。市役所の中にバイオリンの博物館があって、バイオリンが10本ぐらい吊してあるんです。
 バイオリンは聞くから面白いものであって、吊してあるのを見るのはそんなに楽しいもんじゃないですよね(笑)。聞くところによると、吊しているだけじゃなくて、毎日弾いてやってるみたいなんですよ。そうしないと調子が出なくなってしまうということで。

飯坂  そういえば岡本さんが旅行に行っている間に、芦屋かどこかで電車の中にストラディヴァリウスを置き忘れて無事に見つかったという話がありましたよ(笑)。

運営者 ヨー・ヨーマもニューヨークのタクシーのトランクの中に、ストラディヴァリウスのチェロを置き忘れて、無事に見つかったということがあったなぁ。

飯坂  みんな忘れるものなんだ(笑)。

運営者 命の次に大切なものだと思うんですけどね。 

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