西欧における「個人」の誕生




運営者 それと今回は建築も非常に面白く見物してきました。ルネサンスの話になるんですけどね。
 ローマ帝国の隆盛期は建築も非常に素晴らしかったのですが、5、6世紀になると非常に停滞してきまして、このころは初期キリスト教建築なのですが、そこでもうイタリアでは革新は起こらなくなってしまうんですね。
ボッカチオボッカチオ 次のエポックはどこから来るのかというと、北フランスなんです。ロマネスクとか、ゴシックというのはあちらの方で開発された建築様式です。「ロード・オブ・ザ・リング」なんてのも、キリスト教が関係ないゲルマンやケルトの神話世界を再構成したものだと思うのですが、映画に出てくるのはロマネスク建築なんですよ。

 やや話が飛びますが、西欧における「個人」の誕生というのはいつなのかという問題があります。阿部謹也さんの本によると、個人が誕生したのはルネサンスの時代ではなくてその前だったのではないかというのが最近の学問で明らかにされつつあることなんだそうですね。
 懺悔とか告解というのは10世紀ごろだと思うのですが、アイルランドでできたもんだそうです。それまではなかったらしい。

飯坂  へえー。

運営者 懺悔をするというのは、自分自身で信仰の告白と神に対する告解をするわけですから、誰にも頼らずにひとりで神に向き合わないといけないわけです。

飯坂  「神」対「個人」になるわけですね。

運営者 懺悔の風習が大陸に流れ込んできて、11.12世紀にはそういうキリスト教の面からの個人の萌芽があったのではないかということなんです。

飯坂  魔女狩りというのも、「個人に悪魔が宿る」という認識があったからこそ発生した社会問題だったのかもしれませんね。

運営者 そこについては私は情報がないからよくわかりませんけどね。
 その次は12世紀くらいに、文学の世界からルネサンスにつながる流れが起こるんです。ドイツのミンネジンガーとか、プロヴァンスの方で起こった騎士文学、吟遊詩人ですね。あとはイベリア半島にいたアラブからの影響、それらが15世紀になって古代ローマの再発見と相まって、フィレンツェで大きく花が咲くわけです。
 ルネサンスというのは、キリスト教という魂の牢獄からの開放ですよ。キリスト教の精神支配から脱して、ローマ的なるものを取り戻す、言い換えれば自分で自分を縛っていたことに気がつく過程ですね。
 絵画を見ていると、だいたい15世紀の末から16世紀の初めの40年くらいの間に、表現方法にものすごい進歩が見られると思うんです。 

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