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司馬遼太郎「二十一世紀に生きる君たちへ」から   ◆「人間力」エピソード集


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自己を確立し、自分には厳しく、相手にはやさしく



 と言って、下男にもって来させた掛け軸を床柱にかける。その掛軸に書かれていた「常在戦場」という言葉を見た瞬間に、藩士たち人間、苦しみにどれだけ耐えることができるかによって初めて、その人間の値打ちがわかるというもの。皆が一体となり、苦しみに打ち勝ってこそ、国も町も立ち直るのだ。常に戦場にありとは、そこのところを申されたのだと、わしはつねづね拝察しておる」
 あまりの恥ずかしさに、武士たちは崩れ落ち結び泣く。

 「わしは、家中のものが今どれくらい困っているのか知らぬものではない。貴公らの苦しみは十分察しておる。しかし、藩の立て直しには、まず土台から築いていかねばならぬのだ。それまでは、苦しいだろうがどうか辛抱してほしい。虎三郎一生の願いだ。どうか耐えてくれ。これ、この通り。お願い申す」
 と深々と一同に頭を下げる。

 「この百俵の米は、今でこそ百俵だが、やがては、一万俵になるか、百万俵になるか計り知れないものがある。いや、米俵などでは比較のできない尊いものになるのだ」
 藩士たちは、「先刻からの話で、拙者目が覚めました。ただただ、恐れ入ったと申し上げるほかござらん」と一礼し、恥ずかしさのあまりまた泣き出してしまうのだった。 

 長岡藩はこの米百俵を元手にして、六つの教室と教員室、小使室、演武棟を備えた、その後の学校様式を先取りした国漢学校を設立し、そこから多くの有為の人材を輩出した。
 この「常在戦場」の掛け軸は、テレビドラマの水戸黄門の印籠のように盲目的な権威への服従を強要するものとは少し意味合いが異なることに注意が必要だ。小林虎三郎は、藩士たちが心の中で共有している信条を、「常在戦場」の藩是を見せることによってまざまざとよみがえらせ、見失っていた自分自身を取り戻させたのである。そして「武士は社会のリーダーであり、率先して将来に備える努力を続けなければならない」ということ思い出させたのだ。答えは常に自分の中にある。ただ見えていないだけなのだ。

 小林虎三郎は、利害が対立する相手に自分を取り戻させ、何が正しいのかを思い起こさせたのである。
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人間力とは、「大人になること」と見つけたり













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