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『ジュリアス・シーザー』 理詰めの限界   ◆「人間力」エピソード集

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理詰めの説得には限界がある


 人の心に訴えかけようとするときに、どうしても覚えておくべきことがある。
 説得術の白眉と言われるシェイクスピアの戯曲『ジュリアス・シーザー』のアントニーの演説を、人間力的に分析してみよう。

 紀元前四四年三月一五日、事実上、共和政ローマの全権を握り、半ば独裁体制を築いたジュリアス・シーザー(ガイウス・ユリウス・カエサル)は、元老院が開催されていたポンペイウス回廊で、腹心だったブルータスらに暗殺された。
 翌日ブルータスは、ローマの政治の中心地であるフォロ・ロマーノの演壇で、カエサルの遺体を前に演説した。彼は、「わたしは深くシーザーを愛していた。しかし自分がシーザーを殺したのは彼が独裁の野心を抱いたから。わたしがシーザー以上にローマを愛したから。言わば諸君に代わって事を為したのだ」と主張し、ローマ市民は彼の意図を納得してこれを受け容れた。

 次にシーザーの部下でありこのとき執政官だったアントニーが演壇に立った(この事実はなく、シェイクスピアの完全な創作)。アントニーはまず、市民がブルータスの主張に納得しているのを見て、「ブルータスは高潔で公明正大な人物であり、彼がシーザーに野心ありと言うのならそうなのだろう」と肯定した。
 その上で、「自分は知っている事実だけを話そう。シーザーは多くの捕虜の身代金をすべて国庫に収めた。貧しい者が飢えに泣くとき一緒に泣いた。わたしはシーザーに三度帝位を勧めたが、彼は三度ともそれを拒んだ。それでもシーザーに野心があったのだろうか?」と事実を示して、民衆に「果たしてシーザーに、暗殺しなければならないほどの私心があったのか?」と疑わせるように仕向ける。

 さらに「ブルータスはもちろん公明正大な人物だ」と何度も繰り返して民衆に矛盾に気づかせ、「ひょっとして野心を持っていたのはブルータスのほうではなかったのか」と誘導する。
 そして、「かつてみんなもシーザーを愛したじゃないか。わたしも彼を愛している。ではなぜ彼を弔わない」と泣きながら語りかけた。シーザーはそもそも民衆の支持を権力基盤としており、アントニーは彼らのシーザーに対する愛慕の情に訴えかけたのである。こうして民衆はシーザーを支持する心を取り戻し、暗殺者に対する敵意は群集心理によって増幅されることになった。

 ブルータスは「シーザーが画策した帝政を否定し、共和政ローマを守ろう」という理屈で民衆に訴えかけようとした。これに対してアントニーは、遺体を前にして、シーザーのガリアでの戦勝の報せに喜び沸き立ち、何度も彼の凱旋を歓呼の声で迎えた民衆の感情に訴えかけることで、彼らを味方につけることに成功したのだ。この後ローマを追われたブルータス一派はギリシャに逃れるが、二年後にアントニーの軍に破れてブルータスは自殺する。

 すぐれたリーダーは、理詰めの説得よりも、相手の感情に訴えかけるほうが効果のあることをよく知っている。

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