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無愛想な家具売り場のおじさん   ◆「人間力」エピソード集

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「お勧めですよ」と一言も言わずに買う気にさせるテクニック


 人は自分で考えたことは、強制されなくても進んで実行するものだ。
 以前、身をもってそれを実感したことがあった。大手スーパーの家具売り場にローチェストを買いに行った。高いものから安いものまで、五つほどのローチェストが行儀よく並んでいる。しかし知識がないのでどれにすればよいのか見当がつかない。そこで売り場にいた愛想のなさそうな店員のおじさんに、一番安いのと真ん中くらいのを指さして、聞いてみた。

 「この二つの値段の違いって、何なんですかね? 中に衣類が入ればいいだけなんだから、なんの工夫もなさそうだけど」
 するとおじさんはいかにも投げやりそうに、
 「ほら、この安い方の板をよく見てよ。ぺらぺらの合板なわけ。使ってるうちに剥がれちゃうよ。ぜんぜんダメだね。それに比べるとこっちのほうはまともだから、まあ剥がれることはないということ」
 とあっさり答えた。

 自分のところで扱っている家具をよくまあそんなに悪し様に言えるなと思いつつ、そこで二番目に高いのを指して、
 「これと、真ん中くらいのはどう違うの?」
 と聞くと、おじさんはいかにも投げやりそうに、
 「そりゃあやっぱり高い方がいいよ。木の材質が違うし、つくりもしっかりしてて壊れにくいやね」
 とあっさり答える。なるほど、やっぱり値段の分の違いはあるんだなと納得しつつ、
 「じゃ、この一番高いのと二番目に高いのは、どう違うの?」
 とたずねると、おじさんはあいかわらず投げやりそうに、
 「これは、わたしはわかってる人にしか勧めてないね」
 と気になることを言うので「なんで?」とたたみかけると、
 「まずこの細かい飾りを見てよ。ぜんぜん違うでしょ。こういうのがわかってくれないとね。それから開け閉てしてみると、かなり精密につくられてることがわかるよね。虫もつきにくいよ。これは、ほんとうはこの金額じゃ買えないシロモノだね」
 と答える。たしかに、ぜんぜんこっちのほうがよさそうだな。

 そこでわたしは、
 「つまり、この高いのは本格的なしっかりした家具で、安いのはまがいものに近いってこと?」
 とたずねると、おじさんはあっさりと、
 「うん、そういうこと」
 と答えて、あとは知らん顔をして向こうの方を向いている。「なるほど、このおじさん無愛想だけど、言ってることは正しそうだな。どうせ買うなら、ホンモノの家具のほうが長持ちするだろうし、一番目のと二番目の金額差は知れてるから、一番高いのにしても損はなさそうだな……」とわたしは一人でぶつぶつ考えて、「じゃあこの一番高いのをください」と注文してしまった。

 わたしは自分なりに考えて納得したからこのローチェストを買ったつもりなのだが、その判断のための情報をうまく提供しただけで、あとは放っておいてこちらの考えに任せて納得を引き出したおじさんの勝ちなのである。「お勧めですよ」のひとこともなく家具を買わせてしまう店員の手腕に舌を巻いた。

 人間力のある店員は、相手に重要なポイントを教えるのでなく、気づきのための材料だけを与えて自分で考えさせ、有利な結論に導いているのである。

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人間力とは、「大人になること」と見つけたり













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