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葬儀社員は自分を殺してサービスに徹する   「人間力」エピソード集

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修羅場をさばくプロの心構えを見よ


 人はときたま、修羅場に直面することがある。こうした特殊な状況をさばくプロの心構えとはどのようなものであろうか。

 葬儀は、ときに遺族にとっては修羅場である。その修羅場の渦中の人たちをサポートし、葬儀を滞りなく執り行うのが葬儀社の仕事である。公益社という一部上場の葬儀社のスタッフの話を聞いてみた。個人葬を専門に扱っている二六歳の絵に描いたような実直そうな青年で、彼の仕事はご遺体を病院などから安置所に移動し、葬儀の日取りや内容、費用を決め、葬儀の司会進行をしてお骨の安置までを行う、またお墓や法事などについての窓口になるといった一連の流れをすべて執り行うことである。

 葬式のとき、依頼主である遺族は、とにかくたいへんな混乱状態にある。気が動転して精神的に非常に不安定になっている。いきなり近親の死という不幸に見舞われた人は、何をどうしたらいいのか途方に暮れているし、看病疲れの人は疲労のピークにあるのだ。このように心が弱っている人に対して、その心の弱みにつけ込むのは実はかんたんなことである。そのような状況を狙って、うやむやに費用をかさ上げしている葬儀社もあるというのはよく知られることだ。

 実はこの公益社の青年も、自分が中学生と大学生のときに相次いで両親を失うという不幸に見舞われ、喪主を務めた経験がある。そのとき葬儀社の言うがままに費用を払わされたり、出棺直前になってから「棺の中に何か入れたいものはありませんか?」と突然言われたりして、ますますとり乱してしまったという忘れがたい経験があった。その原点から、「喪主の立場として満足できる葬儀を行いたい」という動機でこの青年は公益社に入社したのだ。依頼主にはあくまで誠実に対応し、お客さまの心に付け入らないのが、修羅場の中のプロに求められていることなのだ。

 彼は、「自分は長男だが親は亡くなってしまったので老後の面倒をみなくていい。だから一件でも多く葬儀をやって、一人でも多くのご遺族に、今はたいへんかもしれませんがなんとかなりますよと伝えたい」という気持ちで仕事に向かっている。遺体に接するときは、自分の親に接するように丁寧に取り扱うそうだ。費用については公益社は一〇円までガラス張りなので有名だが、もちろん費用によって祭壇の大きさは変わる。しかし彼は、「もし明日自分が死ぬのなら、会社の利益になるように大きい仏壇を勧めるよりも、あのときあの遺族に満足してもらえた、ああよかったなと思えるほうがいい」と考え、会社の利益よりお客さまの利益を優先してしまうとはっきり言い切る。
 一方、葬儀においてご遺族の意思を反映するためには、実は身内にも敵がいることにも注意しなければならない。遺族がとり乱して当事者能力を失っている場合、世話好きな親戚の人が思うように葬儀を取り引き仕切り、お墓の位置までも決めてしまうことは少なくない。こうしたときにも、彼は遺族の側に立ってフォローしなければならないわけだ。

 また肉親の死に直面した遺族は、少しでもよいことがあったらそれにすがりつきたくなるような心細い状態になっているので、細やかな心配りが求められる。病院から式場に直行する場合にも、自宅の前を通るコースに換えてあげるといった気遣いは当然だ。「そうした追い詰められた状況下で自分が致命的なミスを犯すと、遺族の気持ちの中に残ってしまう。だからどんな些細なミスがあってもならない」と彼は細心の注意を払っている。だがその仕事ぶりは遺族の印象には残らない。なぜなら遺族は葬儀社の仕事に気を払う余裕などないからである。

 わたしはインタビューをするときによく「仕事をしていて泣いた経験はありますか?」と質問することにしている。人の感情が動くときには、必ずそれなりのエピソードがあるからだ。彼にもその質問を投げかけたのだが、彼は表情を動かさず即座に、「葬儀のときに泣いた経験はありません」と答えた。
 「わたしはあえて泣かないことにしています。なぜなら葬儀の現場は遺族にとってはシビアな現実です。そこでテレビドラマを見て泣くようにもらい泣きをしても、遺族の心境がわかっているとは自分には思えません。遺族の唯一の望みは亡くなった本人が生き返ってほしいということです。しかしそれはもう無理なことなんです。ですからそこでわたしが生半可に同情して泣くよりも、プロに徹して仕事をするのがほんとうにご遺族のためを思うことだと思うのです。だからわたしは自分が機械になったような気持ちで、自分の感情を整理し、ご遺族のために仕事をさせていただいているのです」

 相手にはあくまでもていねいに気を遣い、自分は厳しく律するのが、ビジネスマンの基本姿勢である。
 公益社の葬儀のプロは、自分を殺してサービスに徹しているのである。

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