HOME > メルマガ > 自動車トップセールスマンの「心をつかむワザ」

自動車トップセールスマンの「心をつかむワザ」   「人間力」エピソード集

red.gif

つねに「相手の心」を意識しながらお客さまに働きかける


 人間力にとってどうしても欠かせない要素のひとつである、「相手の心のつかみ方」について達人に聞いてみた。
 東京都内のあるカーディーラーの、年間一〇〇台以上も売っているトップセールスマンに、セールスのコツを伺った。四〇歳近い体育会系の精かんな男性だ。彼の売り上げの六割から七割は、自分がすでに売ったお客さまの車の買い替えや増車である。買い替えのセールスは、新車を店頭で買ってもらったときから始まっている。そしてアフタサービスをしっかりしていなければ、同じディーラーで車を買い替えてもらうことはできない。
 新規のお客さまに新車を買っていただく場合、このセールスマンが気をつけているのは、お客さまに「このセールスマンには借りがある」という感情を持ってもらうことだという。
 たとえば新車を買うときには値引きを必ず要求されるが、一発目でほんとうに精一杯の金額を出して「これ以上は値引きできません」とクロージングすると、お客さまは「まあしょうがないな」と思ってしまう。そこでこのセールスマンは必ず二段階作戦をとっている。「ここまでしか値引きできないんですよ」と言って値引きすると、お客さまは必ず「そう言うけれど、あと五万円くらい何とかならないの?」と聞いてくるので、「うーんそうですね、あと二万円が精一杯ですね。これはかなり普通より頑張ったんですよ」と一言付け加えながら譲歩するのだ。このセリフで、お客さまに「ああ彼には借りができたな」という印象を与えるのである。
 納車までに車庫証明や諸費用の受け取りといった用事でお客さまのお宅に三回ほど伺うことになるが、そのとき彼が気をつけているのは絶対に時間に遅れないこと。時間に遅れるとこちらが借りをつくってしまうことになるからだ。逆にお客さまが書類をなくしたとか判子を忘れたといった場合は、こちら側がお客さまに貸しをつくることになるので、「全然心配ないですよ、僕の方で動きますから」と鼻歌を歌いながらフォローすることになる。
 車を納車するときは、経費が厳しいのでガソリンを五〜一〇リットル程度しか入れられないのだが、お客さまに、「ガソリンがちょっとしか入っていませんので、すぐにスタンドに行ってください」などと言ってしまっては「なんだケチだなあ」と思われてしまう。そう言わずに、「ガソリン、気持ちだけ入れておきましたから」という言い方をすると、「そうか、わざわざ気をつかってよけいに入れてくれたんだ」と思っていただける。このような形で、お客さまに、「自分はこのセールスマンに借りができた」という感情を持っていただくように気をつけているのだ。

 買い替えのセールスのチャンスは、法定点検や車検のときにやってくる。点検も、お客さまに気持ちの上での貸しをつくるため、必ず自分が車を受け取りに行く。普通のセールスマンであれば、エンジニアリング部門のスタッフに車を取りに行ってもらうわけだが、もしエンジニアが遅刻してしまったら、お客さまに対してカーディーラー側が借りをつくることになってしまうからである。
 彼の顧客名簿にはだいたい七〇〇人が載っているので、一日にならすと三台点検のために受け取り三台整備が終わった車を戻すという計算になる。このディーラーの営業地域は電車の便が悪いので、セールスマンは原付を三台会社に置いておき、まず点検で車を引き取るお客さまのところに原付で行って、原付をそこにおいて車でディーラーに戻ってくる。雨の日など、雨合羽で原付に乗って帰るのだが、そんなときはさすがに落ち込んで、「オレって何歳だっけ?」と思うこともある。しかしこの姿が、お客さまの目にどう映っているかが問題なのだ。「あいつは自分ができる範囲で精一杯がんばってるな」と思ってもらえれば、そのお客さまの気持ちが彼にとっての成功へのカギなのである。
 さて、車検を一回通してしばらくしたあたりで彼にとってのセールスチャンスがやってくる。平日の昼間に点検のために車を取りに行ったときに、彼は奥様に必殺のキーワードを投げかけるのだ。できる営業マンには、こうしたお客さまの気持ちを見極めるための必殺のキーワード(キー・クエスチョン)を持っている人が少なくない。
 彼は冗談めかしてこう言うのだ。
 「まだこの車に乗り続けるんですか? 爆発しても知りませんよ」
 このセリフはとてもよくできている。自動車のエンジンが爆発するなどということは、まずあり得ないからだ。もし「ブレーキが利かなくなるかもしれませんよ」とか、「エンジンがかからなくなりますよ」などと言うと生臭い感じがしてしまう。だが、「爆発しても知りませんよ」と言われると、お客さまには確実に笑ってもらえるのである。そして肝心なのは、その笑いが収まった後のお客さまの反応を注意して見ることだ。
 「そろそろ買い替えたいな」と思っているお客さまの場合は、「そう言えば何年乗ってるかな?」といった反応を必ず返してくるからだ。そうすると、「そろそろ五年になりますかね。車検も近いし、そろそろ考えませんか」と買い換えをお勧めするわけだ。
 このセールスマンには、その晩この家で何が起こるかが見えている。旦那さんが仕事から帰ってきて、風呂に入ってビールを飲みながら、「きょうディーラーさん車取りに来たの?」と奥さんにたずねるので、「そうそうそう言えば、彼が爆発しても知らないよと言ってたわよ」と奥さんは返事をする。「そうか、結構長く乗ってるもんなあ。そろそろ買い替えようか」などという話を食卓を囲んでしているところに、セールスマンから「いかがでしょうか」と買い換えを進める電話がかかってくるという案配だ。
 もし「爆発しても知りませんよ」といっても、「いやオレはこの車に乗り続けるんだ」と言うお客さまの場合はどうすればよいか。そこでさらにごり押しすると嫌われてしまうのでセールスマンのほうはさらりと忘れてしまうのである。
 お客さまは次の車検を取るので、しばらくして「そろそろかな」と思った時点で電話をかけて、「その節はわたしの腕が悪くて続けて同じ車に乗せ続けてしまいましたが、今回はぜひよろしくお願いします」と言えば、二回続けて断る人はなかなかいないそうだ。さっそく来店していただき、車の説明をして、なるべく早く購入条件の方に話を移してしまう。条件を聞いた瞬間に席を立とうとするお客さまには、「まあそう言わずにちょっと乗ってください」と言えるだけの人間関係は築いている。乗ってみれば、新しい車は今乗っているくたびれた車よりも乗り心地がよいのは確実なので、「やっぱり買おうかな」という話になるわけだ。
 このセールスマンは、お客さまとの人間関係を、感情面での貸し借りで測っている。そして常に自分がお客さまに貸しがある形を作りながら、何百人ものお客さまとの関係を続けているのである。彼が気にしているのは、販売マニュアルの手順ではない。彼が細心の注意を払ってマネージしているのはお客さまの気持ちなのである。
 できる営業マンは、常に相手の感情を意識し、相手の心に働きかける人間力を持っているのだ。

たくさんのお客さまといつも気持ちを通じ合わせておくには
できる営業マンは  感情を貸し借りで測って、いつも貸しのある状態にしておく


red.gif


b.pnga.png

人間力とは、「大人になること」と見つけたり













人間力★ラボ人間力★ラボ
人間力★ラボ

人間力営業人間力営業
人間力営業

“オープンソース型ビジネスマン”の生きる道 目次オープンソース型ビジネスマンの生きる道


Better habits 社員研修 ビジネスマナー研修 新人研修

人間力ラボ 「人間力」とは相手の心に働きかけて、人を動かす力のこと