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イントロ

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Mさんは、ここ3年間、年間90台~100台を売っているトップセールスマンの一人です。89年に日産系カーディラーに入社し、乗用車を販売してきました。
入社当時はスカイラインや、社会現象を起こしたシーマの販売が好調だったのですが、ユーティリティ・ビークルやワゴン車ブームに乗り遅れたため、販売台数がだんだん落ち込んで経営不振に陥<りました。2000年までには最盛期の半分くらいになってしまったそうです。

そういう中でMさんは、「入社以来、販売台数の前年割れはない」ということで、昨年度はメーカーがセールスマンに与える金賞を受賞しました。

 新車販売のルートは3つあります。
 (1) 店頭に来られるお客さま    Mさんの場合5%程度
 (2) 自分のお客さまの代替・増車  6割~7割程度
 (3) 紹介             2割程度

飛び込み営業を行っていた時代もありましたが、最近ではオートロックのマンションが多くなり、なかなか中まで入ることができません。また若い人は「家に来られたくない」という人も少なくなく、新規訪問というのはなかなか難しい状況だそうです。

バブルのころはMさんも、何でも新しいものに飛びつく若者層を追いかけようとしていたわけです。
しかし、「これは景気が悪くなると苦労しちゃうなぁ」と気がついたMさんは、着想と売り方を変える努力をしました。流行りものを追いかける若者層でなく「車は走ればいいんだ」という層の人たちを顧客にしようとしたわけです。それがMさんの固定客になりました。


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(1) 店頭セールス その1

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「車を買いたい」と思われる方が店頭に来られるところから話を始めましょう。お客さまが店頭に来る目的は、「実際に車を買うにはどれくらいのお金が必要か」を見に来るわけであって、重要な情報は「どのくらい値引きをするのか」「下取り価格はどのくらいか」ということなのです。

多くのお客さまは車の性能などはたいして気にしていません。車が好きな人は自分で調べてからいらっしゃいます。ですから、予算と、車のデザインと、応対する営業マンと、営業所の雰囲気を見るために来られているといってもいいでしょう。
ですのでお客さまに「幾らですか」と尋ねられて、金額を言ってしまうと、「ああ、そうですか」と帰っちゃうわけです。だから、その前に「この車が欲しい」という気持ちを精一杯盛り上げなければ、とても買ってはもらえません。お客さまの購買意欲を高めたり、セールスマン本人が気に入ってもらう機会は、値段を言うまでが勝負なんです。お客さまは金額を一番知りたいし、こちらもお話ししたいわけですが、いきなり「本当は値引きできるのはここまでなのですが、特別に頑張りました」と言ってもダメなんです。

そこで、まずカタログでアピールする点を強調し、実際に乗っていただきます。例えばセフィーロであれば、アピールするポイントは広さやシートのゆったり感です。「北米輸出仕様なので、どの車のシートよりも座面が広くできています。乗り降りがしやすいし、エンジン音も静かです」という感じです。
実際に車に乗っていただいて説明をすると、どんな方でもだいたいご納得いただけるはずです。どうしてかと言うと、その人が今現在車に乗っているとして、五、六万キロも走っているとすると、必ず車は痛んでいるはずです。ところが展示場に置いてあるのは新車ですから、乗ってしまえば今の車よりもいいことはくどくど説明するよりも簡単にご納得いただけるわけです。ポイントを挙げて説明しても、お客さまは五つも聞いたところで飽きてしまうでしょう。

展示場の車に乗っていただいて、「今日たまたまこれと同じ車がありますので、一周りだけ外を走ってみませんか」と軽い気持ちで勧めます。乗って外に出てしまえば、車の中は密室ですからこちらの話を聞くしかありません。実際に運転していただきながら、広さや静さなど、「さっき言ったの本当でしょう、今の車と比べてどうですか」と説明するわけです。
ただし、お客さまが運転が上手か下手かで話し方は変えなければなりません。ポイントを一つ話して、すぐ返事が返ってこないようであれば、運転に精一杯なわけで、話しかけてもうるさく思われるだけですから、じっくり乗っていただいて後でお話しします。すぐ返事をしていただける方であれば運転中に話しかけても問題はありません。

奥さんや後ろに乗っているお子さんにも尋ねます。「ぼく、この車いい?」と聞いて、「パパ、これがいい」という返事が返ってきたらしめたものです。子供の意見は非常に大切にされます。同じような車であれば、子供がいいと言った方になるに決まっています。ですからお子さんに嫌われてはなりません。

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(1) 店頭セールス その2

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試乗していただくということは、その車に乗ったという既成事実をつくって断りにくくしてしまうということなのですが、お客さまとしては当然「セールスマンに囲い込まれたくない」と思っているわけです。そこで、あくまでこちらの「囲い込みたい」という気持ちを悟られないように、「ちょっと乗ってみてください、そうするとわかると思いますよ」と、全然軽い気持ちで勧めます。そうすると「買おう」と潜在的に思っている人は乗っちゃうわけです。

言葉の端々で、「買う方向に持っていきつつある」のを確認しながら話を進めますが、「ぜひこれを買ってください」とは見積の段階まで絶対に口にしません。あくまでお客さまに楽な気持ちでいていただくことを心がけています。とにかく警戒心を抱かせないこと。「自分がセールスマンであること」を強く意識して、「セールスマンに何をされたらお客さまは嫌か」を考えるわけです。そうすると、自分で選択する自由を奪われて無理やり買わされるとか、払わなくてていいお金を払うように追い込まれるのが一番嫌なことがわかりますよね。
だから「追い込まれつつある」ということをお客さまに意識させずに話を聞いてもらうのがコツでしょ。

次に、「では下取りの査定をしましょう。車検証を見せていただけますか」ということになるのですが、車検証には、自分の住所が書いてあるので、私に訪問先がばれてしまうことになります。ですが警戒させないように気軽に言えば、抵抗なく車検証を出してくれます。
お客さまが気がついた時には、もう住所はばれているし、下取りの価格が出ているし、子供は車を気にいっているし、この人もまんざら嘘をついてるようじゃないみたいだし・という状況になっていて、値引き価格を聞いて他社と大きな差がなければ、だいたい8割方は「商談成立」だと思います。
店頭で買われる方は、だいたい2回以内の商談で決める方が多いんです。私も若いころは3カ月や半年間かけてお客さまを口説いていましたが、自分が抱えているお客さまが多くなってくるとそこまでできないので、そういう営業は気持ちとしては若手に譲ったつもりになっています。「セールスを始めて2、3年の若手の修行の場」というのが店頭でのセールスだと思うんです。

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(2) 代替・増車 その1

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私が一番やってるのは代替のセールスですが、自分が売ったお客さまでも、アフターサービスをっかりやっていなければ絶対に次を買っていただくことはできません。

法定点検は1年ですが、当社では1カ月目と半年は無料点検をすることにしています。これは、車の態をチェックするということと、整備・車検がガソリンスタンドなどに流れていくのを防ぐという目的もあります。しかしそれより重要なのは、お客さまへのご機嫌伺いが、次の商談を進めるきっかけになるということでしょう。
私の場合、点検も整備も車検も修理も、必ず私自身がお客さまの所にまで車を取りに行きます。
1日3台、これはかなりきついですよ。朝3台取りに行って夕方3台戻しに行くわけです。
この営業所の営業は半径約7キロの範囲ですから、私は原付を3台持っていまして、まず原付で取りに行って、原付は置いて車で戻ってくるわけです。その繰り返し。
たいへん手間がかかりますが、ここが一番のポイントではないかと思うのです。つまり、お客さまが修理を頼んだときに自分が会いに行くのが重要なのです。
それと私は遅刻をしないように時間を必ず守るようにしています。もしサービスマンに取りに行ってもらうと、感謝を受けるのはサービスマンだし、サービスマンが時間を守らないとお客さまのイメージはマイナスになってしまいます。

すでに車を売った人とは人間関係ができているわけで、それを良好に続けることが大切です。お客さまから見て、「あいつは良くやってるし、世話になっているな」と思っていただかないといけません。
私は、営業マンとお客さまにはいつも「貸し借りの関係」があると思っています。そしてそのバランス、必ず営業マンが貸しているほうが多くなければなりません。ですから、まず新車を買ってもらうときにも、お客さまに「借りがある」という感情をつくらなければなりません。

値引きについても、会社がやっている商売ですから条件にはある程度ラインがあるわけです。「これ以上はやってあげたくてもできない」ということもあります。しかし、お客さまには私ができる
範囲で、「いい買い物をした」と思っていただかなければ貸しをつくったことにはならないわけです。むしろ、お客さまの方に「こちらが妥協した」と思わせてしまうと、スタート地点でこちらが借りたことになってしまいますから、その後のいいおつき合いができないわけです。

ですから、値引きの時に最初からいきなり、「ほんとにこれで、いっぱいなんですよ」とクロージングすると、「まあ、しょうがないな」と思わせてしまいます。そうではなくて、「ここまでしかできないんですよ」と一回納得していただいて、するとお客さまはたいてい「5万円くらい何とかならないの?」と聞いてきますから、一回はそこで譲歩するようにします。「2万円がいっぱいですね。これは普通よりかなり頑張ったんですよ」と、必ずひとこと言います。
それを言うのと言わないのでお客さまの「借りができたと」いう印象がまったく違ってきます。言わなければ、お客さまとしては借りができたことがわからないわけですから。嫌らしい言い方をするのではなく、「これは特別な2万円の値引きですから、右手と左手に友人の方を連れてきてくだ
さいね」という感じでしょうか。
このあたりは、気持ちのやりとりをしているわけです。

納車までには、車庫証明や税金などを納める諸費用として40万円くらい集金しなければならず、お客さまのお宅に3回くらい伺うことになります。この時にも絶対に時間に遅れてはなりません。
お客さまに借りをつくることになってしまうからです。
逆にお客さまが時間に遅れたり、「書類をなくしちゃった」とか、「忘れちゃった、申しわけないね」と言われるのは私にとっては楽しみです。なぜなら、それによって人間関係を深めていけるからです。「全然心配ないですよ、僕の方で動いてすぐなんとかします。そのかわり協力してくださいね」と、安心感を持っていただくのと同時に借りをつくることができるわけです。

納車の時も、経費が厳しいのでガソリンを5~10リットルしか入れられないのですが、客先でそれについて、「ガソリンがちょっとしか入っていませんので、すぐスタンドに行ってください」などと言ったのでは、「なんだケチだなあ」と思われるだけです。そうではなくて「ガソリン、気持ちだけ入れておきました」と言うと、「そうか、気を遣ってよけいに入れてくれたんだ」と思っていただけます。

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(2) 代替・増車 その2

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このようにしてお客さまとの人間関係をいかに早くつくるかが問題なのです。これさえあれば、点
検を勧める電話もあまり相手の都合を考えずにかけてしまいます。私は自分のパソコンに独自の顧客リストを持っていて、だいたい今700件弱入っています。これに基づいて点検を勧める電話をか
けるのですが、1カ月で100台程度の点検を勧めることになるわけです。

それで、車検を一回やってしばらくしたあたりで、点検のために車を取りにうかがった時に奥さんに、「まだこの車に乗るんですか? 爆発しても知りませんよ」と、軽く話を振ります。
爆発しても、というのはいいキーワードだと思います。これが「ブレーキが利かなくなりますよ」とか、「エンジンがかからなくなりますよ」などと言うと生臭い感じがしますが、爆発なんかするわけないですから確実に笑っていただけます。それがきっかけで、笑いが収まった後のお客さまの反応が大切です。

「そろそろ買い替えなければならないな」と思っているお客さまの場合は必ず、「そういえば何年たってるかな」とおっしゃいます。そこで私は急にまじめな顔になって、「もう7年になりますね、
来年車検ですよ。そろそろ考えませんか」とお勧めしておきます。そうすると、ご主人が夜帰ってきた時に、「Mさんが爆発しても知らないよと言ってたよ」とお話をされるわけです。
私は、お客さまの反応を覚えていますから、2、3日してから電話をして買い換えの商談を進めることになります。

もし、「爆発しても知りませんよ」と言っても、「いや、おれはこれに乗り続けるんだ」という方<がいらっしゃったら、ここでごり押ししたら嫌われてしまいます。その場合は、早くこちらの方が忘れてしまうのが、いい人間関係を続けるコツなんです。
お客さまは次の車検を取りますから、それから1年ぐらいして電話をかけます。というのも、私はお客さまのリアクションは大体覚えてますから、「そろそろ電話かな」とタイミングを図ることができるわけです。「その節はわたしの腕が悪く、古い車に続けてお乗せてしまいましたが、今回はぜひお願いします」と言えば、2回続けて断るという人はなかなかいないものです。

そこで来店していただいて、よく車の説明をし、今度はなるべく早く購入条件の方に話を移してしまいます。条件を聞いた瞬間に帰ろうとするお客さまには、「まあそういう言わずにちょっと乗っ
ていってください」と言えるだけの人間関係はすでに築いているわけですから。

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(3) 紹介

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ご友人の方をご紹介していただけるというお客さまは決まっています。だいたい飲兵衛のお客さまが多くて、車とか旅行とかマンションといったものは、夜飲みながら友達に相談するというケースが多いようですね。「俺、車買おうと思ってるんだけど、君がこの前買ったセフィーロどう?」というわけです。ですから紹介の場合は向こうから「○○君に紹介されたんだけど」という電話がかかってくるのを待つだけです。

「友人の方に宣伝して連れてきてください」とお願いをするわけですが、私は新車の商談が終わる時にカタログを二部、自分の名刺をつけてお渡ししています。商談が終わるとたいていカタログはぼろぼろになってしまうので、新しいカタログを渡すわけです。お客さまには「記念に取っておいていただいてもいいですし、よろしければご友人の方に紹介してお渡しください」と申し添えます。
そうすると、「ああ、車というのは紹介してあげるものなんだ」とわかってもらえるわけです。そのカタログがどうなっているか私には知るすべはありませんが、少なくともそれが伝わってくれれば十分なのです。

点検の車を取りに行くときにも、まだ新車であれば「車の調子はどうですか、役に立っていますか」
と聞いて、役に立っているようであれば「うれしいな」と言いますし、「あまり乗ってないな」というお答えですと、「せっかく買っていただいたんでぜひ乗ってください、そして周りの人に宣伝してください」とお話しします。「車というのは友人に紹介するもんなんだ」と思っておいていただくというのが大切なんです。

お客さまとのつき合いは、深入りしておつき合いできるお客さまが面白いですよね。
僕自身も酒好きなので、客先にあがり込んでご馳走になったり、よく一緒においしい店を回ったりしています。今日もさっき電話があったのですが、一緒に株を買っていて、「もうかった、お前の取り分12万円できたぞ」なんて言ってきてくださるお客さまもいらっしゃいます。一種の運命共同 体の感じがして、損をしても得をしても楽しいですよね。一緒に波に揉まれているという感覚が楽しい。そういう意味ではお客さまとも対等の関係をつくっていると思います。
クルマの話からどんどん遠く離れて話ができるお客さまが面白いと思う思います。私はゴルフはしないのですが、別荘に子供を連れて遊びにうかがったりもしています。

お客さまのニーズを知るためには、聞き上手であること、とにかく相手の話を聞くこと。そして警戒心を抱かせないことだと思います。二八の原則と言いますが、8割相手の人にしゃべっていただくというのでちょうどいいのではないでしょうか。
客先に原付に乗ってに行くのも、場所によっては格好悪いと思いますよ。例えば大手町のビジネス街まで行ったりしますからね。車検は3日かかるわけですが、3日後の天気がどうなるかはわかりません。雨が降ってきたときは、雨合羽を着て原付に乗って帰りますが、そんな時には「俺って幾つだっけな」とも思います。しかし、その姿がお客さまの目に汚らしいと思われない限りは良い方に映っているんだろうなと思うんです。

「いじらしい」と思ってもらえればしめたものです。「なぜ車に乗らないのと」聞かれたら、「乗<れないんですよ成績が悪くて」と答えます。「あいつは、自分ができる範囲でがんばっているんだな」と思われるように努力をすれば、きっとお客さまの心の中にある効果が広がるのではないかと思うんです。

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人間力とは、「大人になること」と見つけたり

人間力とは、「大人になること」と見つけたり